乾杯は【伊丹の酒】で!
小西酒造株式会社 社長 小西新太郎さん
――小西社長は生まれも育ちも、もちろん伊丹ですね。
伊丹は、おもしろいまちですよ。清酒が伊丹で生まれたのは、酒屋の小僧さんが主人への腹いせに、にごり酒の桶に灰を投げ込んだら澄み酒になった、という逸話があるんです。
地名もおもしろくて、「伊丹」の名は、JR伊丹駅あたりまで入り江だった絲海(イトウミ)がイタミになったとか、また馬に四斗樽を二つ積んだ単位が「一駄」で、「駄六川」は、六駄の清酒を樽廻船で江戸へ運んだ名残、と言われています。
有岡城は、武家屋敷や城下町をぐるりと城塞で囲んだ、当時としては珍しい総構えの城でしたし、俳諧文化のこと、酒造りのことなど、話が尽きないのが伊丹なんですね。
――でも、そのおもしろさは、意外と知られてなくて。
それが残念でね、もっと広めたいと思って、イベントや催しに積極的に参加しているんです。西暦1550年に創業した小西酒造が、457年も続いたのは、伊丹に育ててもらったおかげ。その恩返しの思いもあって、伊丹を盛り上げていきたいですね。
――小西社長オススメの、お酒の楽しみ方は?
戦後の酒は「至酔飲料」で、酔いそのものを楽しみましたが、今の時代はやっぱり、おいしい料理と一緒にいただくことですね。「食」の部分無くして、お酒は語れない。おいしい料理を食べながら、仲間と楽しく語り合い飲むお酒が一番だと思っています。醸造酒はビールもワインも好きですが、日本食には、やはり日本酒が合いますよ。
――醸造酒といえば、ブルワリービレッジ長寿蔵で、搾りたての地ビールと日本酒が味わえますね。
おかげさまで、1995年のオープン以来、たくさんの方に来ていただいてます。清酒、ビールと来たら、次の醸造酒はワインですが、自然いっぱいの広島県世羅高原に、昨年オープンした「せらワイナリー」で、ワイン醸造をおこなっています。お酒を通して人とつながり、世界が広がっていくのは楽しいですね。
――これは、徳利と盃じゃないですか!? お酒を飲みながらインタビューですか?
いえいえ、昔はそうしたこともありましたが(笑)、今はしないですよ。これは、酒盃台付の盃でね、小ぶりで口が少し広がっているでしょ。常温のほんのり冷たいお酒は、こういった盃で飲むと、味が違います。お酒の温度と器との相性をお伝えしたくて、持ってきました。お酒を楽しむシーンによって、どんな銘柄が合うか、料理や器、座布団の座り心地も追求したい。ビーズ入りの座布団は、足が痛くならなくてね、結構いいですよ。
――社長の興味の幅は、広~いですね。ところで、お酒の失敗談なんて、まさか無いですよね?(笑)
酒屋ですからね、外で飲む時は気をつけているんですが、失敗は3度ばかりありまして(笑)。一番ひどかったのは、寒い冬の日に、大学時代の先輩と飲みに行き、気がついたら家のガレージの前で寝ていたこと。あの時は、もうちょっとで凍え死ぬところでしたねぇ。
――親しみが沸きます(笑)。まだまだお話を伺いたいのですが、最後にこれからの夢をお聞かせください。
今、海外では日本食と共に「健康に良い」と清酒ブームで、小西酒造もオーストラリアに工場を持ち、欧米に輸出しています。夢はね、シャンパニュー地方のスパークリングワインのみを「シャンパン」と呼ぶように、「地理的表示」が認められること。そうすれば伊丹の名前を、世界中に知らせることができますから。
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