男と女の「おかしな!?」ハナシ
おとうさんからもらったおかねで、おかあさんはなにをかっていますか?
あなたの身の回りにも時々起こる、
「これってどうなの?」
「おかしくない?」という話。
このコーナーでは、毎回、
「男と女のちょっとおかしな!?ハナシ」を、つぶやいてもらいます。
おかあさんのしごと・おとうさんのしごと
今回のつぶやき主は50代の主婦、ヒサコさん。
妹のケイコさんと一緒に、
高齢の両親が二人で住んでいる
実家の物置を片付けています。
母キミコ:懐かしいわ~この服! あなたたち二人に、お揃いで作った「よそいき」。
自分で作った物って、思い入れがあるとなかなか捨てられないのよね~。
ヒサコ:あら~っ、お母さんったら、私たちの小学校の時のテストまで残してるの!
ケイコ: これは1年生の社会のテストね。
「1.おひゃくしょうさんのうち」
「2.やまではたらくひとのうち」
「3.こうじょうやかいしゃではたらくひとのうち」だって。
父コウタ:そういえば昭和40年代は、まだ近所にお百姓さんや山の仕事をする人もいたなぁ。
ヒサコ: ねぇねぇ、この「こうじょうやかいしゃではたらくひとのうち」の問題どう思う?
読むわよ。「つぎのえは、おかあさんのしごとです。なにをしているところでしょう」
ケイコ:えっと、(1)ほうきではきそうじ、(2)ぞうきんでふきそうじ、(3)せんたく、
(4)ふくろはりのないしょく、(5)しょくじのしたく・・・。
母キミコ:へぇ~、こんなことも学校で習ってたんだね。お母さんも知らなかったわ。
ヒサコ: 次の問題もすごいよ。
「おとうさんからもらったおかねで、おかあさんはなにをかっていますか?」
ですって!!
ケイコ:「お父さんからもらったお金」・・・今だったらこんなテストありえない~(笑)。
ウチの子の中学校技術・家庭の教科書なんか見てると、
男の子も女の子も家事をするのが当たり前って感じのイラストや写真でいっぱいヨ。
◆ヒサコのつぶやき・・・
結婚してからずっと「どうして私だけが家事をしないといけないんだろう?」って、悶々としていたけれど、学校でこんなにはっきりと教えられていたとはびっくり。
何だか私、あのテストを見て、小学1年生の自分がかわいそうになっちゃった。
「そっかぁ、炊事、洗濯、掃除は、お母さんの仕事なんだ」と、何の疑問も持たずに先生の言うことを信じていたんだろうなぁって。
確か1年生時の担任の先生は女の先生だったけれど、あの頃はどう思いながら教えておられたのか聞いてみたいわ。
◆ケイコのつぶやき・・・
私たちが子どもだった頃って、外で働いているお母さんは、すっごく少なかった気がする。
まわりのお友達のお母さんはほとんど専業主婦だったし、シングルマザーなんて言葉もなかった。
ウチの子どもたちが結婚したら、どんな家庭生活をおくるのかしら?
◆母キミコのつぶやき・・・
娘たちにはしっかりとした仕事を持って欲しい!と思って大学まで行かせておきながら、一方で「女は家のこともしないといけなから大変だよ」とか「女は結婚したら相手の家の人になるんだからね」なんて矛盾したことをたくさん伝えてきてしまったような気がするわ。
◆父コウタのつぶやき・・・
あのテストを見て、女3人で、えらく盛り上がっているけど、何がどうすごいのか、さっぱりわからん。
【ミニ知識】
【母親の仕事の多様性!?】
上記の話は、昭和40年代半ばに、実際の小学校の現場で使われていたテストを基にしています。
このテストの問いの「ねらい」は【父親の仕事の意義と、母親の仕事の多様性について考える】と書いてありました。
ちなみにこのテストが使われた当時の「小学校学習指導要領・社会・指導上の留意事項」は「・・・家族の人たちの仕事について学習を行う際、単にいろいろな仕事を列挙するだけでなく、いわゆる家計の基礎である職業的活動として行われている仕事と家族の衣食住の世話にあたる仕事などとの間には、「仕事」という同じことばで呼ばれても、そこにはかなり意味の違いがあることに気づかせ・・・」と記載されています。
横からちょっと言わせて
専業主婦もパートも経験した
関西学院大学人間福祉学部教授
今井小の実さん
「ジェンダー福祉論」「ジェンダー福祉研究」といった科目を大学生、大学院生に講義している教員としては大変、興味深く、昭和40年代の社会科のテスト問題を拝見させていただきました。
「男は仕事、女は家事・育児」といった性別役割分業を体現した、いわゆる「ジェンダー家族」が大衆化するのがこの時代だと教えているからです。
もちろん家族の世話も「仕事」であることには変わりませんが、農業人口が減少し日本の産業構造が第二次第三次産業に大きくウエイトを移していったこの時代にあって、「仕事」の価値についても貨幣価値が生じる家庭外労働に重きが置かれるようになっていったことが「ミニ知識」の情報からも読み取れます。
そして貨幣価値の発生しない家族の世話(ケアの「仕事」)の役割を担うのは女性、貨幣価値の発生する、いわゆる生産労働に従事し家族を養うのが男性という家族のあり方が一般家庭にも浸透し、性別役割分業の規範が現実生活のレベルでも定着していったのです。
教育はその固定化に加担していった装置であったことがよくわかる、まことに興味深い「オハナシ」でした。
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