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令和元年度埼玉県幸手市・埼玉県越谷市

1.視察出張委員
 委員長   保田 憲司     委員   山本 恭子
 副委員長  川井田清香      〃     齊藤 真治
 委員    花田康次郎      〃     杉   一
 〃     岸田真佐人      〃     高塚 伴子
 〃     永松 敏彦      〃     久村真知子
2.視 察 先 埼玉県幸手市、埼玉県越谷市
3.視 察 日 令和元年8月8日(木)~8月9日(金)
4.調査事項  下記報告のとおり


◎8月8日(木) 15:00~ 埼玉県幸手市

<地域包括ケアシステムの取り組みについて>

 初めに、幸手市議会事務局長からの歓迎あいさつを受けた後、保田委員長が、視察を受けていただいたことに対するお礼を述べた。続いて、社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス東埼玉総合病院地域糖尿病センター長・在宅医療連携拠点菜のはな室長 中野智紀医師から説明がなされた後、質疑応答がなされた。

<説明の概要>
 地域包括ケアシステムは高齢化社会対策として介護保険制度の後継に位置された政策であり、特に政策上の理由として高齢化を背景に大きく2つの課題を解決するために制度設計されているということである。1つ目は財源問題、2つ目はサービス供給の需給ギャップ問題である。しかしながら、これらの解決のための地域包括ケアシステムとは異なっているのが幸手モデルである。介護保険制度における地域支援事業や包括的支援事業などを活用してはいるが、制度の枠組みで閉じたシステムではなく、住民、行政、専門職などのあらゆる主体と資源を組み合わせた統合的な地域システムとしてとらえ、生活を支援することを目的としている。専門職が連携するだけでなく、住民の中に入っていくことが重要であり、生きることの苦しみをいかに支え、どのように支援を行い、住まい 医療 介護 予防 生活支援が一体的に提供される「地域包括ケア」を実現する取組を行っている。
 平成24年度に幸手市、杉都庁、北葛北部医師会により、在宅医療連携施設「菜のはな」が東埼玉総合病院に設置された。コミュニティナース、コミュニティソーシャルワーカー、コミュニティワーカーから成るCommunity social-care workers(以下、CSCWs)を組織し、個人が集団に包括される環境を作ること、社会保障制度や専門家による道具的支援や情報的支援を、必要な際には生活モデル上で個別化して活用する支援を開始した。CSCWsは、現在、幸手市と杉戸町にある地域のリビングのうち、39か所を暮らしの保健室としてよばれる機能として定期巡回による支援を行っている。平成27年度に制度や枠組みを超えたあらゆる生活問題に関する相談ができる「地域まるごと電話相談」を持ち、住民からの相談にも随時対応している。
 また、自治会のような共同体への支援形態として住民主催の地域ケア会議がある。平成24年度UR幸手団地に最初の健康と暮らしの支えあい協議会が設置され、現在4地域の自治会においてこのような形式による支援が広がっている。
 さらには、コミュニティに接続する住民を菜のはなの主な対象とし、孤立する住民を地域包括支援センターが主な対象とするとともに、孤立した住民が再びコミュニティの輪の中に招き入れようという動きをする住民らの取り組みとも共同することで、多面的で多層的なアプローチによりセーフティーネットの張り直しを行っている。
 幸手モデルでは、多様な地域ケア会議で生活支援へ向けた障害となっている課題を現場から抽出し、地域包括ケア会議や地域包括ケア関連協議会で繰り返し協議され、意思決定される。すなわち、幸手モデルは、支え合いの支援を目的として、障壁となっている制度や運用などを現場視点で調整や改変することが可能であり、成長する地域包括ケアシステムであるといえる。

<質疑応答>
(問)行政の制度に当てはまらない人の支援をどのように取り組んでいくのか。
(答)問題解決したことだけを成果として報告しないような制度設計が必要であると思う。
(問)地域に行政が絡んでいく必要性と効果測定はどのように行うのか。
(答)人間は自分で生活しているが、行政が言うべきではない。どれくらい支援が本人に届いたのかが重要。どれだけ一人で抱え込んでいる人たちが減ったのかというところが成果の指標になると考えている。
(問)介護や生活支援など、医師会として総合的に支援をしていこうというのは中野先生がきっかけか。
(答)平成24年在宅医療連携拠点事業は単年度予算であったが、翌年から3カ年県の事業として予算は減額されたが継続することとなり、予算事業となった場合に、医師会を経由しないで行う場合のリスクを考えた。
(問)地域包括ケアシステムの利用や参加をされていなかった方を何とか参加させたというようなエピソードはあるか。
(答)参加をさせることはない。無理に集まる必要はないと言っている。コミュニティから外れた方に対しても支援が届くようにしている。その人にとってどのようにしていくことがいいのかを一から組み立てる。
(問)近隣関係、アソシエーション、地縁型はどのような組織になるのか。
(答)近隣関係は近所の友だちみたいなもの、アソシエーションは共通の目標を持ったテーマ型のコミュニティ、地縁型は従来の自治会型、地区みたいなもの。


◎8月9日(金) 9:00~ 埼玉県越谷市

<夏期学童給食について>

 初めに、越谷市子ども家庭部副部長(兼)青少年課長からの歓迎あいさつを受けた後、保田委員長が、視察を受けていただいたことに対するお礼を述べた。続いて、越谷市子ども家庭部副部長(兼)青少年課長から事前に連絡していた質問事項等について説明がなされた後、質疑応答がなされた。

<説明の概要>
(事業の概要)
 学童保育室は昭和49年に開始。公設学童保育室を主とした運営を行っている。現在は市内30小学校区全てに公設学童保育室を設置し、公設公営は26校区で40保育室、公設民営は4校区で8室となっている。開室時間は、学校授業日は放課後から午後7時まで、学校休業日は午前8時から午後7時まで、土曜日は午前8時から午後6時まで。夏休みなどの長期休業期間においては、午前8時前の開室を求める声が多かったことから、昨年度から早朝保育事業として、夏休み期間は、午前7時30分の開室の試行を行っている。
 夏期学童給食については、平成17年度に25保育室中9保育室で試行し、翌年度から全ての公設保育室で給食の提供を開始した。市内3か所の学校給食センターが持ち回りで調理し、各保育室へ午前11時から午前11時30分までに配送している。通常の給食期間中の配送は業者委託だが、夏休み中の配送については、給食センターの職員が行う。通常の給食と同様に、大食缶、小食缶、食器等が配送され、児童は、箸やスプーンのみを用意する。食缶や食器等の返却は指定された分別を行い、午後1時30分から午後2時までに給食センターの職員が回収する。学童給食は提供期間内に1日単位で注文することが可能で、電子申請が利用できる環境を整えている。なお、1食あたり270円の実費徴収をしている。食物アレルギーの対応は行っておらず、献立とあわせて公表している原料配合表により、利用者(保護者)が確認のうえ、注文する。
(給食を導入した経緯)
 夏休み期間中の調理員の業務は、学期中に実施困難な食器や調理機材等のメンテナンスを行っていたが、職員から人材・施設のさらなる有効活用の提言があり、事業実施に関する検討が行われた。また、学童保育室からは夏休み中の弁当持参に伴う衛生管理面への不安があった。このようなことから市長部局と教育委員会が協議を重ね、平成17年度の試行後、夏期学童給食提供事業が開始された。
(事業費について)
 保護者から1食あたり270円の実費徴収をしている。給食の材料費に相当するものであり、納付書払いである。給食提供にかかる人件費、光熱水費等は、教育委員会での負担している。ただし、夏期学童給食にいくらかかっているのかという集計はしていない。
(児童・保護者の反応について)
 登録児童の約7割が注文し、栄養価が高く安全で、温かい昼食を手軽に食べることができるという声や、就労する保護者の弁当作りの負担軽減になると大変好評を得ている。一方で、子どもが嫌う献立や量が少ないということなどを理由に弁当を持参する児童もいる。
(導入によるメリット・デメリットについて)
 学校給食センターの施設及び人員の有効活用が図られた点や、子育て世帯に優しい事業である。しかしながら、施設の老朽化に伴い生じる大規模改修工事等で提供日数が安定しない点や夏季の過酷な環境で給食を調理する職員の負担、食中毒に対するリスク管理など、事業の実施にあたり配慮すべき事項も多い。
(今後の課題)
 保護者からは給食提供の日数増加を求める要望がある。就労支援と子どもたちの安全な生活の場を確保するためにも事業の拡充を図りたいと考えている。しかしながら学校給食センターは、学校給食を安全安心確実に提供することが目的の施設であるため、長期休業期間中に行われる施設設備の改修やメンテナンスを優先しなければならず、学童保育室における給食提供日数においては、現状を維持せざるを得ない。
 また、学童給食の提供期間中は調理員が配送を行っているが、配送車が現在の普通免許で乗れる規格ではないため、運転できる職員がいなくなるかもしれないことが懸念される。配送業者へ委託するとなった場合、予算をどこが負担するのかという検討も必要となってくる。

<質疑応答>
(問)給食センターは何か所あるのか。
(答)3か所である。
(問)大規模改修やメンテナンスの話もあったが、3か所で輪番にしていけば、止めることなく給食を提供できると思うが。
(答)各施設の老朽化が進んでいるため期間中に多くの工事が必要となると聞いている。年次ごとに各施設順次、工事を行うことも検討されたそうだが、同時期に工事をした方がよいのではないかということで、まとめて行ったということである。
(問)3センターとも夏期休業中に稼働しているのか、1センターだけなのか。
(答)各センター持ち回りでやっている。そのようにすることで、通常の学期では取りにくい休みを取っている。職員側からの要望もあったと聞いている。また、調理する食数も少ないため3センター全てを稼働させる必要がない。
(問)長期休業時は民間委託すれば人件費の削減にもなると思うが、他市で直営から民間委託した際に、夏休み期間中に給食を提供するので直営を続けて欲しいといったような話が職員からあったということを聞いたことがある。事業を導入するときにそのような動きはあったのか。
(答)あったと聞いている。
(問)配送車は通常の給食にも使用されているものか。
(答)同じものである。
(問)夏休み期間中だけ、普通免許で運転できる配送車をレンタルや購入することは検討しているか。
(答)夏休み期間中だけとなるとコストもかさむことから検討したことはない。
(問)事業導入の経緯について、働く職員の立場から人材・施設のさらなる有効活用の提言があったということだが、事業のスタートは保護者ではなく市からということでよいか。
(答)そのような経過であったと聞いている。しかし、給食課に届く声と学童保育室(青少年課)に届く声は違い、お弁当作りは大変なのでコンビニで買ったものを持って行ってもいいか等の声があった。越谷市の学童保育室ではコンビニのお弁当をそのまま持ち込むことは禁止している。
(問)発案は市であったが、家庭からも潜在的なニーズがあり合致したということか。
(答)実際利用があることを考慮すると、朝の忙しい時間帯のお弁当作りの負担があると考えている。
(問)現状、現場から大変だという声はあるか。今後、民間委託への方向性はあるか。
(答)事業においての民間委託への方向性は持ち合わせていない。ただし、配送については通常の給食と同様に業者による配送を検討した経緯もある。
(問)通常の給食費は学年により金額が違うと思うが、一律の金額であるのはなぜか。
(答)元々の学童保育の対象者は1年生から3年生までであった。平成27年に6年生まで拡大されたが、5・6年生の入室者が少なく、小学校で1食あたり約250円、中学校で約300円ということから間をとって270円ということである。
(問)給食の申込率が減っている理由と申込みをしていない児童はどうしているのか。
(答)平成29年度に給食センターの大規模改修工事実施のため学童給食を休止した。推測になるが、その時に1年生だった児童の給食に対する認識が薄れたのかもしれない。学年が上がっても、短期間しか提供されないのであればお弁当を持参させようという家庭もあると現場から聞いている。また、給食を利用していない児童はお弁当を持参している。
(問)給食提供期間以外はお弁当を持参しているのか。
(答)そのとおり。
(問)給食の児童とお弁当の児童が混在していることについてはどう考えるか。
(答)家庭の事情や給食が嫌いな児童もいると考えており、全員で給食を食べるという方針ではない。
(問)配送を民間委託すると1食あたり550円程度ということであったが、税を投入して270円で実施をした場合の市民の意見等はあるか。
(答)予算要求時の検討材料として、配送を民間委託した場合の話であるり、外部には出していない。
(問)お弁当の持参を忘れた場合はどうなるのか。
(答)保護者に連絡を取り同意を得た上で、指導員がコンビニにおにぎりを買いに行く。代金は迎えの時に保護者から徴収する。給食を注文したのにお弁当を持参した場合は、どちらを食べるのか保護者に確認している。連絡が取れない場合は、アレルギーの問題もあるのでお弁当を優先している。
(問)残食はどうか。
(答)メニューによって残食が多い日もある。ただし、嫌いなメニューの場合は注文しなくてもいいというところが通常の給食とは違うので、パーセンテージとして通常より残食が多いか少ないかの確認はしていない。
(問)牛乳は必ずついているのか。学校給食法のカロリーは満たしているのか。
(答)牛乳はついていない。満たすことを目指しているが、学童給食の場合は必ずしも合致させる必要はないと聞いている。しかしながら、通常と同様にカロリー計算や食材の調達を行っている。
(問)夏期学童給食費の減免はあるか。
(答)減免は行っていない。
(問)申込期間をもう少し給食実施期間の直前にして欲しいとの声はないのか。
(答)そういう声は直接には届いていない。食材の調達・発注の関係から調整を行い申込期間を決定をしている。なお、電子申請することにより以前より申込み期間を長く設定することが可能となった。
(問)毎食食材ごとに放射線測定を行っているのか。結果をホームページ等で公表しているのか。
(答)いくつか食材を選んで測定し、給食提供前にホームページで公表している。
(問)アレルギーのリスクや訴訟のリスクを想定したことがあるか。
(答)アレルギーがある児童については給食やおやつ提供時にアレルギーがない児童と交錯しないような対策をとって対応している。
(問)給食費の納付状況と、滞納理由は。
(答)滞納はある。昨年の納付率は99.4%で、単純にお金がないということをおっしゃる。
(問)食材はどこまで給食センターで調理しているのか。市販品を使用しているのか。
(答)通常の給食と同じものを提供している。
(問)学童保育での配膳の様子は。
(答)給食センター職員が保育室まで搬入し、配膳は指導員が行う。袋に入っているものについては、児童が配膳を手伝うこともある。返却時は、学校給食センターから指示されたとおり、食缶に戻すものや一般のごみとして処理するもに区分している。
(問)学童給食時の調理する職員数は。
(答)調理にあたるのは、1か所のセンター職員が担当する。他の給食センター職員は調理しないが、配送を担当することになる。
(問)献立を作成する際に、小規模であることを生かして通常給食のメニューテストのようなことをすることはあるか。
(答)そこまではやっていない。通常の学校給食の方で、栄養士が考えたメニューを新しいメニューとして提供する取組みが行われている。
(問)通常の給食で好評だったメニューが、学童給食で提供されるということか。
(答)そういったものを学童給食に取り入れるというような感じである。あえて残食が多かったメニューを提供するということはない。
(問)給食を提供することにより配膳等の業務が増えたと思うが、指導員からの人件費アップや人員増等の要求はあるか。
(答)賃金のベースアップや給食期間中の特別手当て等の話はない。元々、賃金は毎年ベースアップしている。
(問)指導員の資格基準や募集状況は。
(答)省令に基づき、条例を作成している。その中で資格要件を満たした職員を募集している。夏休み中については夏期パートとして臨時職員も雇用している。
(問)入室者数の増加原因は。
(答)レイクタウン地区の人口の流入が大きな原因と思われる。
(問)今後入室者数が増加しても給食の提供は対応できるのか。
(答)給食センターを利用した給食提供が事業の特徴となっている。給食センターを頼らざるを得ないので提供できない時期が発生するが、そこを調整していくことが難しい。ただ、市長部局、教育委員会、現場の職員もこの事業に否定的な考えは持っていないので、うまく調整しながら今後も進めていきたいと考えている。
(問)給食はどのような形で食べるのか。また、低学年、高学年が給食を一緒に食べるメリット・デメリットは。
(答)基本的に長机を向き合いにして食べている。メリットとしては、異年齢との交流ということで、それぞれの立場での助け合いができると考える。デメリットは、いろんな子どもがいるので、大人しい子どもが被害を被ることもある。

                                                                                              以 上

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