男と女の「おかしな!?」ハナシ
今も変わってない?
あなたの身の回りにも時々起こる
「これってどうなの?」「おかしくない?」という話。
このコーナーでは、毎回、「男と女のちょっとおかしな!?ハナシ」を、つぶやいてもらいます。
今回のつぶやき主は、アイさん。
夫のショウタさんと一緒に休日に、撮りだめていた朝の連続テレビ小説「虎に翼」をのんびりと見ています。
ショウタ: 今と違って昔の女性って色々と制限されていたんだ~。さすが100年近く昔だね。
アイ: え? 私は、100年たっても変わってないやんって思いながら見ているんだけど。
ショウタ: ええええ? 今も変わってない?
アイ: 結婚するときに「家の姓(戸主と同じ姓)を名乗る」のではなく、「夫または妻の、どちらの姓を選んでもよい」という新しい民法の案について、多くのオジサンが「日本の良いところがなくなる、家庭が、社会が崩壊する」って言っているシーンがあったでしょ。
ショウタ: ああ、あったね。
アイ: 実際は、そういう法律ができても、社会も家庭は崩壊しなかったよね~。
100年たった今でも、「希望する夫婦は別姓を選択できるようにする」っていう案が出るたびに、ドラマと全く同じことを言っている人たちがいて、ホントにあきれちゃう。
ショウタ: 確かにそうだよなぁ。
アイ: 弁護士を辞めて、夫の故郷に帰った大学の先輩が「女性は結婚すると、仕事も、家事も、育児も100点を求められる。
そんなのできるわけないじゃない」って言っていたけど、それだって今のワンオペしているママたちと全然変わらないわ。
アイ: 会議の場で「そもそもこの場に女性が1人しかいない。
あとはみんな男性じゃないですか」って主人公の恩師が言う場面があったけど、今も男性ばっかりの会議がたくさんあるし。
ショウタ: 確かに。うちの会社の重役会議もそうだし。この前のぞいた自治会役員会議も、ほぼ全員男性だったな。
アイ: 大学への進学もそうよ。いまだに女性は男性より大学進学率が10%も低いし。
理学・工学系は、女性が2割くらいしかいないし。
「うちは女の子だから理系は関係ないのよ」って話す保護者が普通にいるし。
ショウタ: そもそもその選択肢を選べなかったり、その選択肢は自分に関係ないと刷り込まれて育った女性がいるってことか。
◆アイのつぶやき・・・
夫婦の名字をどっちにするかくらいで、家庭や社会が崩壊すると思われるなんて、国民をばかにしているわ。
「自分たちの既得権を失いたくないのよ」ってセリフに思わずうなずいちゃった。
主題歌の「100年先でまた会いましょう」って歌詞を聞くたびに、♪100年たっても変わらない、って思っちゃうのよね~。
とても素敵な歌なのに。
◆ショウタのつぶやき・・・
100年前の事としてドラマを見ていたら、「ドラマでのできごと、今の価値観で見たらすごくおかしいな」って思えるのに、今も変わっていないことがたくさんあるって、アイさんに言われるまで気づかなかったよ。
ミニ知識
日本の司法分野における女性の割合も、諸外国に比べて非常に少ない。
2020(一部は2021年)の女性の割合は裁判官28.7%、検察官27.2%、弁護士19.8%である。
弁護士の女性の割合を2018年度の諸外国(アメリカ:34.4%、イギリス:48.8%、韓国:25.4%、ドイツ:34.4%、フランス:55.4%)と比べても、大幅に低いことが分かる。
参考資料:日本弁護士連合会「基礎的な統計情報(2018年)」、日本弁護士連合会「基礎的な統計情報(2023年)」、弁護士学園「法律家の世界における男女早見表」
弁護士で、不惑を越えてからの子育てに奮闘中の中村衣里さん
弁護士や裁判官、検察官等、法曹三者のいわゆるリーガルドラマはいくつもありますが、この「虎に翼」は本当によくできたドラマだと思い、毎日楽しみにしています。
たとえばこれまでよく見かけるドラマは、ある「事件」を題材に、それをどのように解決していくか、どのように判断していくかという過程を1話ごとに描いていくものが多く、なんとなく先が予想できてしまうので(特に法律家は、「あの判例のあの事件を扱っているんだろうな」等とすぐに答え合わせをしてしまうのです)、もう見なくてもいいかと思い、見続けなくなることがしばしばありました。
けれどもこのドラマは、一人の法律家の生活、人生を中心にしながら、周りにいる人物を、その背景にいる街角の女性、男性、一人ひとりにまである時には焦点を当て、よく考えられたセリフとともに、毎回、毎週何等かのテーマをもって、社会に潜む問題(それはまさしく現代にもつながっているものばかりです)を上手に扱っていました。
私は20世紀後半から21世紀初めにかけて放送されたアメリカのドラマ「アリー my Love」で、社会を法的な視点で見ることの面白さを感じ、法律家への興味を抱きましたが、この「虎に翼」が、現代を生きる日本の若い人たち、特に女性たちが、法曹を志すきっかけのドラマの一つになることは間違いないと思います。
今回すでにアイさんとショウタさんが拾い上げてくださったテーマはもちろん、この「虎に翼」にはたくさん過ぎるほど、私たちが日ごろから感じ、苦しんでいる問題が盛り込まれています。
このドラマを作られた方々が日々感じておられる社会の問題を非常にうまく取り込んでおられると関心するばかりで、語り出すときりがないほどです。
しかし例えば、夫婦の氏の問題。
「選択的夫婦別姓」等の難しそうな言葉を使っても「関係がない」と思っている人にはすっと理解ができないこの課題も、こうしたドラマ、メディアを通して魅力的な登場人物に語ってもらえば、これまで無関心だった皆さんにも問題提起がしてもらえている、と感じています。
私自身も生まれたときから一緒に歩んできた氏(苗字)を変えたくないとの思いで、夫と婚姻届は出すことなく生活をしてきました。
このドラマ内の言葉を借りれば「夫婦のようなもの」の生活も、はや銀婚式を迎える期間となりました。本人たちの意識においても、またおそらく周囲から見ても、その家族の形は「のようなもの」ではない、と自負していますが、この事実婚であるが故に超えられない法律や制度、そして一部の人たちの心の壁は残念ながら存在します。
どう考えてもおかしなこの仕組みが、もう変わるだろう、もうすぐ変わるだろうと思い続けて、はや四半世紀です。
まさかここまで変わらないとは思いませんでした。
でも、こうしたドラマの力もその一つですし、全国では、裁判手続きを通した問題提起、国会や全国の市町村議会への働きかけ、経済界の動き等が同じ方向を向いて重なってきました。
あともう一息!のところまで来ていると思います(信じたいです)。
おかしいと思ったことにおかしいと声をあげる勇気、そしてそれを理解する人たち、まずは耳を傾けようとする人たち、応援する人たちがいて、社会は確実に変わっていく。
そして変えていかなければならないと、このドラマを見て勇気をもらっています。
原稿担当 : NPO法人 あなたらしくをサポート(愛称:らしーく)
イラスト : 林やよい
※このイラストを利用されたい場合は「NPO法人あなたらしくをサポート」nporasiku@gmail.com までご連絡ください。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
「虎に翼」、100年たっても・・・
今も変わってない?
授業中にも刷り込みが!?
水着のはなし