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伊丹市ポータル「いたみん」

1章 はじめに

(1)まちづくりとは何か-「参画と協働」をめざして

「まちづくり」という言葉を使う時、私たちの心に浮かぶのはどんなことでしょう。それは、道路や各種施設などのものづくり(ハード面)に関することや地域住民の生活にかかわることへの住民参加の仕組みづくり(ソフト面)などではないでしょうか。まとめていえば「生まれ、育ち、住み、働き、学び、老後を過ごす地域を、より便利に、人間らしく生活していくために、力をあわせてどうつくっていくか」ということになるのでしょうか。しかし、そのような定義づけをしてしまうことが、市民が主体的にまちづくりに参加する道を狭くしてしまっているのかもしれません。

私たちが、今回「まちづくり基本条例をつくる会」(以下「つくる会」)でさまざまな意見を持つ方々とまちづくりに対する思い、意見、提案などを話しあってきたこと、そのことそのものもまちづくりではないでしょうか。

すでに、伊丹市では環境、教育、子育て、福祉、商業などまちづくりに関する多種多様な分野で、市民の活動が行われています。そのような活動をしている市民も、これからまちづくりに参加しようとする市民も、これまでの行政主導ではなく政策や施策の立案に参加していくこと(以下「参画」)や行政と協力して施策の実行を担っていくこと(以下「協働」)などを通じて、自らが主体となって多様なまちづくりに積極的に関わっていきましょう。そして、そのことが真の市民自治の実現につながっていくと私たちは考えます。

(2)市民会議「つくる会」の経過と提言にいたるまでの思い

「つくる会」は、「参画と協働によるまちづくりのあり方や進め方等について、その基本となるまちづくりの理念や市民、事業者及び市がそれぞれどんな役割と責任を担うのか、さらには、市の政策決定の手続きはどうあるべきなのか等、広範囲にわたってご論議頂きたい」との市の委嘱を受け、1月20日より21回の全体会と17回の運営委員会を重ねてきました。また、傍聴者の文書による意見提出制度や報告会(意見交換会)などを開催し、広く市民に開かれた「会」として運営してきました。

「つくる会」は、これまでの各種審議会等(注釈)とは違い、運営方法も開催日程も運営委員選出も議事録づくりも、委員自らが提案し、話しあいによって決めてきました。これまでの経験とは異なったやり方に多くの委員は戸惑いながらも、真摯に話しあってきました。また、「まちづくり基本条例」という、普段聞き慣れない条例への提言について、共通認識をもつことにも多く時間を必要としました。

その中で、「熟議」ということばにはじめて出会いました。熟議とは「多様な立場、考え方の人々がお互いに理解しあいながら、話を重ね合意に向けて努力を積み重ねていくこと」です。自分の意見を主張するばかりでなく、相手の意見もよく聞き、お互いが理解しあい、尊重しあいながら合意をめざして話を重ねていく、この「つくる会」はまさしく熟議の場であったと思います。私たちは、経験を通じて、熟議がいかにむずかしいものかを実感しました。これからは、市民も努力して熟議の場を作り出していくこと、また、行政も市民同士が熟議をする場をつくったり、すべての人が熟議に参加することを保障することが、これから求められることだと思います。

私たちは、多くの時間を共有する中で、まちづくりへの熱い思いをもつ多くの人たちと新しいつながりができたことを誇りに思います。この提言には、そんな委員の思いが込められています。

「つくる会」全体会と運営委員会の開催経過は、下記のとおりです。

(注釈) 審議会等

市長が政策・施策などの提言を求めるために設置した機関で、審議会・協議会・懇話会などがある。

全体会議
開催回数日時出席傍聴概要
全体第1回1月20日26・委員の自己紹介・会の公開を確認
全体第2回2月3日21・会の運営方法について討議・3月8日からの公開を確認・傍聴者からの文書意見の提出、議事録の作成などを確認
全体第3回2月17日23・議事録、委員名簿の公開を確認・座長(運営委員会)などについては引き続き討議
全体第4回3月8日2111・傍聴要領の確認・会則案、座長(運営委員会)などについては次回以降に・次回より課題抽出についての討議を確認
全体第5回3月24日146・基本条例への提言へまちづくりの課題抽出から討議を始める
全体第6回4月5日163・引き続きまちづくりの課題抽出を討議・次回より3グループでの討議を確認
全体第7回4月28日218・コーディネーターより「まちづくりの仕組みと手続き」についての講話・グループ編成と運営を確認
全体第8回5月10日1813・3グループで「市民参加のまちづくりの状況」「まちづくりに市民が関わっていく仕組み」などについて討議・グループ討議の発表
全体第9回5月26日186・欠席者の関係で2グループで討議、グループ討議の発表
全体第10回6月7日216・引き続き3グループで討議・グループ討議の発表・次回での運営委員会選出を確認
全体第11回6月23日179・運営委員会6名の選出・行政との意見交換-コミュニティ推進課、まちづくり支援課、企画調整室の各担当より報告と意見交換
運営第1回7月8日6-・第12回より3グループに分かれて第8回~第10回の討議で出てきた5項目の課題での討議を確認
全体第12回7月12日1911・運営委員会の報告・上記内容でのグループ討議(再編成)
運営第2回7月21日6-・第5回~第6回、第8回~第10回で出された意見をもとに5項目の課題との関連で討議・市民の定義について討議
全体第13回7月28日2012・運営委員会の報告・ホームページの年次表記で討議・「情報公開と情報の共有など」5項目に基づくグループ討議
運営第3回7月28日6-・「参画と協働」、基本条例の性格について討議・ホームページの年次表記で討議・第13回の討議報告と次回の討議方向を確認
全体第14回8月9日1311・運営委員会の報告と確認・引き続き5項目に基づくグループ討議
運営第4回8月18日6-・第14回の討議報告と提言までの日程、及び提言の章立てについて討議
全体第15回8月25日217・運営委員会より提言までの日程について提案、討議・公聴会の概要の確認・これまでの討議のポイントを深める
運営第5回8月25日6-・提言までの日程について討議・コーディネーターより参考意見の聴取・提言骨子(案)づくり
運営第6回9月1日5-・提言骨子(案)について討議・原案を確認
運営第7回9月7日6-・提言骨子(案)と今までの全体会、グループ討議で出された意見の整理作業・第16回の運営を確認
全体第16回9月13日177・提言骨子(案)の提案、討議・運営委員長、副委員長(全体会会長、副会長)の選出について討議・直接請求制度の学習
運営第8回9月14日6-・上記役員の選出・第16回で出された委員の意見について検討・各章ごとに素案作成の担当を決定
運営第9回9月21日6-・各委員が分担した提言素案原案について討議・次回全体会での「住民投票制度」「対話の場・市民会議」の学習を確認・報告会検討部会の設置を確認
全体第17回9月29日124・提言素案原案の作成状況について報告・「住民投票制度」「対話の場・市民会議」についてコーディネーターより説明と討議・報告会検討部会の設置を確認
運営第10回9月29日6-・第9回運営委員会に引き続き各委員が作成した提言素案原案を討議、各章の中の項目と小見出しについて再検討
運営第11回10月5日6-・各委員が再検討した提言素案原案の第1章~第5章(2)までを討議・報告会について検討部会の案をもとに検討
運営第12回10月9日6-・提言素案原案第5章(3)から9章までを討議・報告会検討部会で作成された報告会チラシ、ポスターを検討
全体第18回10月11日133・提言素案原案第1章~第5章(2)までを討議・報告会の基本的プログラムを確認、チラシ、ポスターを検討・報告会までの日程の確認
運営第13回10月17日6-・提言素案原案への全体会での意見と文書意見について検討・報告会チラシ、ポスターの確認
運営第14回10月21日8-・提言素案原案への全体会での意見と文書意見について検討・報告会タイムスケジュールを確認
全体第19回10月27日147・提言素案の討議・報告会の運営についての確認
運営第15回10月27日6-・提言素案の確定・報告会運営についての討議
伊丹市公文書
公開審査会
10月31日3-・「『つくる会』で討議されている情報公開・共有の考えについてお聞きしたい」との申し出に応じ、3名の委員が出席し意見を述べた
運営第16回11月6日--・報告会運営の最終確認
報告会11月9日22130・提言素案の報告・意見交換
全体第20回11月9日18-・市民報告会と意見アンケートで出された質問・意見を討議・住民投票の制度について討議
運営第17回11月17日5-・報告会のまとめ・住民投票の制度についての討議
全体第21回11月24日137・報告会のまとめ・提言の最終確認

(3)提言に込めた全委員の思い

「つくる会」の委員は、一年の討議の中で、委員をはじめ傍聴者、報告会参加者、さらに多くの市民のまちづくりに対するさまざまな思いを提言に込めようと話しあってきました。各委員の思いの一端を述べさせて頂きます。

・「自分たちのことは自ら考え、学び、最終決定に責任を持ち、お互いに一致できることからはじめる」ことが、まちづくりへの第一歩だと以前より強く感じるようになりました。この条例が市民が主役のまちづくりのスタートになることを期待しています。

・40年間伊丹で過ごしてきましたが、市民として誇りに思えることなどについて、自分の思いを提言として出したくてこの会に参加しました。提言が市民の利益や他のまちづくりのモデルになることを願っています。

・自らの活動を反省させられる部分に気づいたり、市民のさまざまな活動を改めて知る機会でもありました。このような市民の力を充分発揮でき、共感を得られるような仕組み、制度を望む思いを提言に込めました。

・さまざまな立場、環境の人が自分の思いを自由に語りあい、すべての人がまわりに人を大切にするやさしい市であったらどんなにすばらしいことでしょう。

・参画・協働がどれだけ必要なものかを考えさせられると同時に、提言づくりも責任と役割が求められ、日々の生活、活動の中で両立していくことの大変さを痛感しました。自分の抱えている問題を解決してもらえると参加した思いを反省するとともに、関心の薄い市民がまちづくりへの「興味」「関心」「気づき」を感じるためにはどうしたらいいのかを考えていく努力をしていきたいと思います。

・伊丹に転居した時、どこに行けば知りたい情報があるのか市役所でウロウロしました。既住の市民はもちろん、新しい市民への情報発信も積極的になればと思います。

・この提言が現実の市民生活の中で、小さな単位からでも生かされて、市民生活の向上が図れればと思っています。

・伊丹市民であることに誇りを持つことができるまちづくりができればと思います。

・参画と協働の場で、企業の発展と地域社会の発展を重ねあわせて将来を見つめていけるまちづくりを目指せたらと思います。

・情報を共有することは、参画と協働への意欲の自己確認、自己充実、そして自らの意欲で市民としての行動参加が始まっていくということで、「つくる会」の意義が明確にそれぞれの人々のものになっていく喜びを今じんわりと感じています。

・社会的少数者がつらい思いをするまちは、本当の意味で幸せなまちではありません。違いを認めあい、多様性を尊重するまち、すべての人が幸せを享受できるまち、そのようなまちづくりができればとここに集いました。

・参加した当初は、「助けてくれ、何を考えればいいのか」と分別がつきませんでしたが、ここに来て市民が考える行政のあり方、行政がつくる市民の姿とのギャップを考えられるようになりました。また、世の中、自分のためにだけ時計は動いていないことにも気づかされました。

・委員に選ばれてから関わってきた時間は、会議で約130時間、そのための学習と文書づくりでも同じくらいの時間は使ったでしょう。多くの委員がそれだけの時間をかけた提言だから、文章表現はまずくても思いはこもっています。

・最初は日ごろの行政や市民への不満を言いあい、どうすれば、住みやすい魅力あるまちになるか、そのために市民も行政も何をすべきなのかを考えてきました。伊丹のまちの歴史をはじめ、よいところ、誇れるところを話しあえれば、もっと良かったと思います。

・このつくる会に参加させて頂いて、多くのまちづくりに関心のある人と出会い、さまざまな意見があるなかで対話の場が生まれました。お互いの立場を考えることでいろいろな勉強をさせて頂きました。つくる会の委員として、運営委員会のメンバーとしてみんなでつくった提言に思いを込めてこれからもまちづくりの実践に邁進して行きたいと思います。

・西も東も判らず応募し、いままでに経験したことのない「共有」という主題にまごつきました。しかし、楽しく愉快な時空を多くの方と共にしたことは大きな喜びです。これからもこつこつと「歩」を進めて行こうと考えています。

(4)この提言の読み方

「つくる会」は、市民のまちづくりへの参画と協働を進めるための土台となる仕組みを念頭において、この提言書をつくりました。
提言づくりは市民の目線で始めようという考えから、委員が日頃の生活、地域活動、市民活動などで感じているまちづくりについての意見を出しあうことからスタートしました。全体会やグループ討議で出されたまちづくりについての委員の意見と傍聴者からの文書意見は、第14回までで300項目近くになりました。(参考資料1)そして、それらの中から大きな項目を拾い出し、章だてを行いました。

まず、意見のまとめの項目である「2章まちづくりの現状と課題」「6章情報の共有化」「7章新しい参画・協働の仕組み」を抽出しました。

次に、意見から読み取れる「3章まちづくりの基本理念」や「4章市民の役割と責務」「5章行政の役割と責務」を盛り込みました。

提言に基づいて作成される「まちづくり基本条例」がどのような役割を担ってほしいか、私たちの思いを「8章条例の位置づけ」で明確にしました。

これまで議論したまちづくりへの思いや、条例を作成されるにあたって私たちの提言を最大限尊重してほしいという思いを「1章はじめに」と「9章おわりに」で整理しました。

なお、この提言でいう「市民」とは、多くの人が力をあわせてまちづくりに関わる必要があることから、伊丹に住む人、働く人、学ぶ人などすべての個人や法人、団体のことを指すものと考えます。

また、提言の中で市民になじみの薄い言葉やこの提言ではこう受けとめてもらいたい言葉については注釈を行いました。