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令和2年度教育基本方針

木下教育長は、令和2年第1回市議会定例会(令和2年2月25日)で、令和2年度教育基本方針を表明しました。内容は以下のとおりです。

はじめに

 先程、市長から、市政運営の基本方針及び令和2年度予算案の諸事業について、所信の表明がございましたが、これに基づきまして、私から、令和2年度の伊丹市教育基本方針について、重点施策を中心に、その考えを申し述べます。
 現在は、100年に一度の大変革時代です。生活のあらゆる場面で、ICTを活用することが当たり前の世の中となり、人工知能(AI)やビッグデータ、IoT等の先端技術が急速に進展しています。
 このような変化の激しい社会において、子どもたちが直面するのは、「答えのない問題」です。「10年後、20年後には、子どもの65%は、今、存在しない職業に就く」、「今ある仕事の約半分は、自動化される」と言われています。
 教育の使命は、「子どもたちの幸せの実現」と、「社会を支えていく人材の育成」です。
 令和2年度は、このような社会を生き抜くために必要な資質・能力の育成をめざし、「幼児期の教育の充実」「学力の向上」「ICT活用による学習の推進」に重点的に取り組んでまいります。

重点項目1:幼児教育の充実

 令和2年度は、4月に、わかばこども園、さくらだいこども園を開園し、こばと保育所も移転・新設します。また、存続する8園の公立幼稚園全園において、3歳児保育と預かり保育を開始するなど、「幼児教育改革元年」とも言える年です。
 「子どもは、5歳までにその生涯に学ぶべきことを学び終える」と言われているように、幼児期は、その後の子どもの発達や人生に大きな影響を与える最も大切な時期です。
 平成31年度に子どもに関する施策を教育委員会に一元化したことで、全ての子どもを対象とした教育・保育の推進体制が整いました。また、一元化により、様々な課題も明らかとなってまいりました。
 令和2年度は、これらの課題の改善に取り組むとともに、主体性や非認知能力の育成を目的とした「幼児教育・保育の質の向上」及び年々増加する保育所ニーズに対応するため「待機児童の解消」に取り組んでまいります。

重点項目2:学力の向上

 昨年の秋、平成30年に実施されたOECD国際調査(PISA調査)の結果が公表され、我が国の高校生は、「読解力」に課題があることが明らかとなりました。
 大量の情報の中から必要なものを選び出したり、情報を疑ってみたり、自分の考えを表現する力が足りないことや、情報端末を使いデジタル情報を読む力が不足していること、また、その背景に経済的・文化的格差が潜んでいることなどが明らかとなりました。これらの課題は、全国学力・学習状況調査の結果からも、本市の子どもたちにも共通する課題であります。
 このような課題をどのように克服するのか。従来の教師主導による知識の伝達を中心とした学びでは克服することは難しく、「主体的・対話的で深い学び」が有効であるとされています。
 新しい時代のキーワードは、「主体性」です。主体性は、人間が持つ感覚(姿勢)の中で最も大切なものです。
 この「主体性(学びに向かう力・人間性等)」に加え、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」の3つの資質・能力をバランスよく育むために、「社会に開かれた教育課程」の理念に基づき、「主体的・対話的で深い学び」の実践に取り組んでまいります。また、学校運営協議会を活性化し、学校・家庭・地域の「横の連携」を強化するとともに、幼児期の教育と小学校の教育を教育課程で接続するなど「縦の連携」の強化に取り組んでまいります。

重点項目3:ICT活用による学習の推進

 今回の学習指導要領の改訂において、初めて「情報活用能力」が、言語能力や問題発見・課題解決能力と同様に「学習の基盤となる資質・能力」に位置付けられました。併せて、「学校におけるICT環境の整備方針」や「教育のICT化に向けた整備5か年計画(2018~2022年度)」が示されました。
 国際社会では情報化が劇的に進んでおり、これからのグローバル社会においては、「情報活用能力」が不可欠であります。必要なICT環境を整え、教科等の指導においてICT活用の促進を図り、思考力・判断力・表現力等の育成に取り組んでまいります。
 さらに平成28年度に策定した、本市の教育の指針を定める「第2次教育振興基本計画」の最終年度となるため、令和3年度から4年間を計画期間とする「第3次教育振興基本計画」を策定いたします。
 重点対策について申し上げましたが、引き続き、「第5次伊丹市総合計画」の体系に沿って、各分野における主な取組をご説明申し上げます。

基本目標 市民が主体となったまちづくりの実現

基本方針2 多様性を認め合う共生社会

 人権尊重のまちづくりについては、市民団体と連携し、学校・家庭・職場等における人権意識の向上を目指すとともに、引き続き「性の多様性」に関して、児童生徒の発達段階に応じた授業を展開し、市民に対しても正しい理解の促進を支援してまいります。
 多文化共生のまちづくりと国際交流については、国際的な視野を持った生徒の育成や、外国人園児児童生徒の個々のニーズに応じた指導の充実に努めてまいります。

政策目標1 支え合いの心でつくる安全・安心のまち

施策目標1 安全・安心のまちづくり

 交通安全対策の推進については、伊丹警察署等との連携を強化し、児童生徒の交通安全に関する知識の習得及び意識の高揚に努めるとともに、子どもたちの交通安全に関わる市民の方のボランティア保険加入補助を行います。

政策目標2 未来を担う人が育つまち

施策目標1 子ども・若者・家庭・地域がともに育ちあう環境づくり

 保育・幼児教育の充実については、増加する保育需要に対応するため、新たな民間保育所等の誘致や保育人材の確保を図るなど引き続き、待機児童対策を進めます。
 また、「伊丹市幼児教育ビジョン」を柱として、就学前施設・学校・家庭・地域・行政が十分に連携を図り、「主体性の育成」をねらいとする幼児期の教育に取り組みます。
 特に、幼児期の教育と小学校の教育との滑らかな接続について、互いの教育・保育内容を理解し合い、「発達と学びの連続性」を重視した教育を推進してまいります。
 令和2年4月開設の幼児教育センターにアドバイザーを配置し、教職員の研究・研修等の充実を図るとともに、各地域に拠点園を整備し、同センターと連携を図りながら市全体の幼児教育の質の向上を推進してまいります。
 発達に支援を要する子どもの支援については、こども発達支援センター「あすぱる」・幼児教育センター・総合教育センター・民間事業所等との連携を図り、発達に配慮が必要な子どもたちが安心して生活できるよう取り組みます。
 子どもの育ちの支援については、令和2年度中に御願塚の地に新児童館をオープンし、子どもたちの創造性を育む取組をさらに進めてまいります。
 稲野児童くらぶを稲野幼稚園跡地に移転整備し、定員増を図ってまいります。
 若者の自立支援については、令和2年4月にリニューアルオープンする青少年センターや少年愛護センター等において、青少年や保護者の相談に対して適切な対応・助言を行ってまいります。
 子育て支援の充実については、子育て世代包括支援センターにおいて、育児相談や情報提供などに努めてまいります。併せて幼児教育無償化を実施し子育て家庭への経済的負担の軽減に努めます。
 地域ぐるみの子育て支援については、子育て支援や青少年健全育成に資する団体の活動を支援してまいります。

施策目標2 子どもの生きる力を育む魅力ある学校教育

 昨年の学力テストの結果等から、主体的に学ぶ姿勢や知識を活用し問題を解決する力に課題があることが明らかとなりました。
 自ら学び自ら考える力を育む教育の推進については、まず授業改善を行います。教師主導の授業から子どもが学びの主体となる授業へ転換し、「主体的・対話的で深い学び」を実現してまいります。単なる知識や技能の習得ではなく、得た知識等をもとに自分で考え判断し表現できる力を積み残しのない指導により、低学年から確実に育成してまいります。
 学力向上支援教員を配置するなど、「少人数指導」を充実し、一人ひとりを大切にした授業を実施するとともに、「放課後学習」や「子どもサポーター派遣事業」を実施してまいります。
 家庭との連携を図り、予習・復習の定着や自主学習ノート等を活用し、自己の課題に応じて学習に取り組む力を育成し、家庭における主体的な学習習慣の確立を目指します。
 学校・家庭・地域の連携・協働により実施している「土曜学習事業」などの地域学校協働活動において、子どもたちの実情を踏まえ、学習習慣の定着と地域人材を活用した体験学習などの多様な学習内容の事業に取り組んでまいります。
 新たな社会への対応力を育む教育の推進については、小学校で本格的に始まるプログラミング教育に取り組むとともに、全小・中学校での学習者用端末や無線LAN環境の整備を進め、ICTを活用した授業を推進します。
 令和2年度からの新学習指導要領全面実施により、小学校3,4年生で外国語活動を、5,6年生で外国語科を実施するとともに、学級担任や外国語を担当する教員が、英語指導補助員(JTE)や外国人英語指導助手(ALT)の協力を得て、より効果的な英語教育を推進してまいります。
 魅力ある市立高等学校づくりについては、選ばれる学校を目指し、特色化・活性化を一層推進し、課題意識の高い、チャレンジ精神旺盛な意欲ある生徒を育成してまいります。
 特別支援教育の推進については、全ての子どもにとってわかりやすい「教育のユニバーサルデザイン化」を推進します。また、「個別の教育支援計画『ステップ★ぐんぐん』」の作成及び活用を促進し、特別な支援を必要とする全ての子どもに対し、切れ目のない指導と必要な支援を行います。
 豊かな心を育む道徳教育、情操教育の推進については、小・中学校における道徳の教科化に伴い、答えが一つではない道徳的な課題を一人ひとりの児童生徒が自分自身との関わりの中で考え、対話を通して多面的・多角的に考える等、「考え・議論する道徳」を実践します。
 子どもの問題行動への対応については、いじめ問題への対応として、「いじめ防止等対策審議会」や「いじめ防止フォーラム」等を通じ、全ての市民がいじめ防止の認識を高め、いじめの課題解決に向けて、市民総がかりで取り組むとともに、いじめを組織的に認知し、未然防止及び早期発見・早期対応に努めます。
 さらに、「スクールカウンセラー」等「チーム学校」としての組織力を向上させ、警察等関係機関との連携を進めてまいります。
 不登校児童生徒への対応として、「『心の居場所』としての学校づくり」に取り組み、児童生徒の学ぶ意欲の向上や自尊感情の高揚を図り、新たな不登校を出さないように取り組みます。
 さらに、教育支援センター「やまびこ」では、移転に伴う環境の整備・充実や教科学習に加え体験活動を取り入れたカリキュラムの充実を図ってまいります。
 子どもの健やかな体づくりと部活動の推進については、体育授業の改善や休み時間等における「外遊び」を推進し、様々な運動経験の充実や運動の日常化に努めてまいります。また、中学校では、外部指導者や部活動指導員を配置するなど、部活動の充実を図るとともに、本市が作成した部活動に関する方針に基づき、適切な部活動の運営に努めてまいります。
 健全な食生活の推進については、「献立コンクール」や栄養教諭による「食に関する指導」等の充実を図り、食への関心を高めるとともに、アレルギー対応を着実に行い、安全を最優先とした取組を進めてまいります。
 また、学校給食本来の趣旨を踏まえ残食等の食品ロス問題についても取り組むなど引き続き、食育・環境教育等に取り組んでまいります。
 学校園情報の積極的な発信と学校園運営への市民参画については、教育広報紙や情報紙、市ホームページ等を通じ、保護者や地域住民に伊丹の教育の現状等を積極的に情報発信し、課題の共有を図ります。
 また、学校と地域が協働して学校運営に取り組む「コミュニティ・スクール」を充実させ、学校運営協議会と地域学校協働活動との一体的な推進を図ります。
 安全・安心な学校園づくりについては、学校園施設の整備として大規模改造工事、空調設備改修工事などの老朽化対策及び、体育館や格技室などのLED化を実施してまいります。
 通学路の安全確保として、改善要望等がある箇所に対して、市関係部局や伊丹警察署等と連携を図り、迅速に対応してまいります。また、「まちなかミマモルメ」の効果的な活用を進め、登下校時の見守り活動等において地域の方等からご協力いただきながら通学路の安全確保に努めてまいります。
 教職員の意識改革と資質の向上については、教職員のライフステージに応じた具体的な授業実践や教育実践につながる研修を継続してまいります。また、いじめや不登校などの教育課題対応研修や新学習指導要領に対応した研修を行ってまいります。

施策目標3 ライフステージごとに学び活躍する人づくり

 市民の主体的な学習や活動の支援については、公民館をスワンホール内にリニューアルオープンし、生涯学習センター及び図書館南分館の大規模改修工事を行い、各施設の特色を活かした生涯にわたる市民の学びの環境を充実してまいります。
 伊丹の特色を活かした学びの創出については、「ことば蔵」では、「図書館を使った調べる学習コンクール」を定着させ、児童生徒はもとより市民の調べる力やまとめる力、表現する力を育むとともに「交流フロア運営会議」などを中心に、市民が相互にふれあい・語りあい・学びあう「交流事業」を企画・実践してまいります。
 博物館では、平成31年度に刊行した博物館史料集「有岡(伊丹)城跡」の成果を広く周知するため、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の放映に合わせ、伊丹・有岡城に特化した企画展を開催するなど、本市の歴史文化への関心を高めてまいります。
 生涯スポーツの環境づくりについては、「東京2020オリンピック・パラリンピック」、「ワールドマスターズゲームズ2021関西」の開催を契機として、多くの市民が参加できるパブリックビューイングなど、各種イベント等を実施してまいります。
 また、「伊丹市スポーツ推進計画」に基づき、世代や性別の違い、障がいの有無等に関わらず、あらゆる市民が気軽にスポーツに親しむことができるよう支援してまいります。
 伊丹の特色・資源・人材を活かしたスポーツ振興については、本市の特色として全中学校で実施している「なぎなた授業」の更なる充実を図るとともに、「全国高等学校なぎなた選抜大会」を引き続き開催し、「なぎなたのまち伊丹」を全国にアピールしてまいります。

政策目標3 にぎわいと活力にあふれるまち

施策目標1 個性とにぎわいあるまちづくり

 文化財の保存と情報発信については、国指定史跡「伊丹廃寺跡」・「有岡城跡」の整備等に取り組み、埋蔵文化財センターの展示の充実や子ども向け体験学習を通して郷土の埋蔵文化財・歴史遺産の情報発信を図ってまいります。
 文化財を活かしたまちづくりについては、市民により結成されている文化財保護団体と連携したまちづくりに取り組んでまいります。

 以上、令和2年度の伊丹市教育基本方針について、ご説明申し上げました。市教育委員会としましては、「子どもたちの幸せの実現」に加えて、これからの社会を生きていく人材の育成に全力で取り組んでまいりますので、ご理解・ご支援賜りますようお願いいたします。