1.視察出張委員
委員長 泊 照彦 副委員長 大江ひろと
委 員 杉 一 委 員 竹村 和人
〃 保田 憲司 〃 服部 好廣
〃 松浦 晴美 〃 新内 善雄
〃 鈴木 隆広
2.視 察 先 愛媛県今治市・愛媛県松山市
3.実 施 日 令和6年7月8日(月曜日)~9日(火曜日)
4.調査事項 下記報告のとおり
◎7月8日 14:00~ 愛媛県今治市
<ドローンを活用した消防救助活動について>
初めに、今治市消防本部消防長より歓迎のあいさつを受けた後、泊委員長よりお礼のあいさつがなされた。続いて、今治市消防本部総務課・警防課の担当者から説明を受け、質疑応答がなされた後、消防救助活動用ドローンの飛行デモンストレーションを見学した。最後に、大江副委員長よりお礼のあいさつがなされた。
<事業の概要>
(1)消防ドローン隊「DICS」の概要
ドローンは、令和4年度に中央消防署、北消防署に1機ずつ、計2機(計約820万円)が配備された。また、令和5年度には、西消防署に測量用カメラやナイトビジョンカメラを搭載したドローンを1機(約650万円)、中央消防署に物流用のドローンを1機(760万円)それぞれ配備した。
ドローンは、Matrice300RTKという機種で、高性能カメラ及びサーモカメラと呼ばれる熱を感知するカメラ、さらに、スピーカーを搭載しており、ドローンから要救助者に対して声をかけることが可能となっている。
「DICS」は、Drone(ドローン)、Intelligence Collection(情報収集)、Squad(分隊)の頭文字から命名したもので、令和5年度に隊として発足した。
消防無人航空機運用要綱に基づき、署長の判断により都度編成され、隊長・操縦員・安全員の3名以上で構成され現場活動を行う。
(2)ドローンを導入するに至った経緯や、消防ドローン隊を発足するに至った経緯
今治市島しょ部では海岸沿いに唯一の生活道路が走り、背後に急峻な山が迫る集落が数多く、平成30年の豪雨災害で土砂崩れによる人的被害が発生した吉海町泊地区、伯方町有津(あろうず)地区も同様の地形であった。その際、災害現場に先着した消防隊が再度発生した土砂崩れで一時孤立状態となり、同時に緊急輸送道路である来島海峡大橋が通行止めとなったことから、被害状況の収集、応援隊の派遣が困難となり、消防隊及び地元消防団が孤立状態となる中で、活動を継続する必要が生じた。
近年の大規模化する自然災害等に備えるには、被害状況、活動に必要な情報を早期に収集し、迅速・的確な人命救助活動につなげることが特に重要であると考えたためドローンの導入に至り、市民に親しみを持ってもらえるよう「DICS」という名称を冠し、ドローン消防隊として発足するに至った。
(3)これまでの活動実績
ドローンを活用した消防救助活動の実績や件数は、火災が13件で、そのうち延焼面積を測量調査するために活動した実績が10件ある。
また、国や他の自治体との合同訓練などの実績としては、国の海上保安部との合同訓練があり、ドローンによる捜索を含めた水難救助訓練を実施した。
消防本部単独での訓練は、令和5年度19回、令和6年度6回の計25回実施しており、令和5年度の今治市総合防災訓練で市民への披露の場として活動した実績がある。
今後は、市内の事業者団体である「しまなみドローン協会」との合同訓練等を模索している。
(4)市民の反応
市民アンケート等を実施していないので、市民の直接的な反応は把握していないが、今治市消防本部にドローン隊「DICS」が存在していることは、他の自治体からの問合せ等があることから、一定程度、認知度が高まり、効果があったと考えている。
また、災害現場での運用が目的であり、イベント等での飛行は基本的に実施しないため、今治市民にどの程度認知されているのか不透明なところもあるが、令和5年9月のしまなみマルシェに合わせた海上保安部との合同訓練や、令和5年11月の消防フェスタでのドローン展示と隣地を使った飛行訓練を市民の見える範囲で実施し、その映像をモニターに映し出すことで、多くの市民が興味・関心を示していた。
(5)今後の活動予定や計画
現在11名の操縦員について、順次国家資格を取得していく予定としており、令和6年度に6~7名、令和7年度4~5名、令和8年度以降2名ずつ、国家資格を取得できるようにすることを目指し、定期的な訓練を継続し職員の技術力の維持・向上を図っていく。
また、延焼中の建物火災において、ドローンにより火勢の状況を調査し、その後の消防活動(消火活動・安全管理)へ繋げていく。
(6)課題等
機体の更新について、どの程度の期間で実施するのか、また、予算がどのくらい必要になるのかが課題である。また、職員の国家資格の取得や資格の更新に係る予算についても同様である。今後、国の有利な財源を活用できるのかは、現時点では不明なところもあり、財源確保も課題であると認識している。
<質疑応答>
(問)稼働しているドローンの画質はどの程度なのか。
(答)4Kである。
(問)測量用カメラとはどのようなものか。
(答)焼損面積を正確に算定するためにドローンに搭載しているカメラである。焼損面積を算定する業務の省力化につながっている。
(問)連続稼働時間はどれくらいか。
(答)バッテリー2台を搭載しており、およそ45分は稼働できる。
(問)雨天時にもドローンを飛行させることは可能か。
(答)防滴機能があり、少々の雨であれば飛行することはできるので、災害時には雨天でも飛行させるが、訓練などでは飛行させていない。
(問)ドローンにより撮影した映像データの通信は何で行っているのか。
(答)LTE回線である。
(問)どの程度の高度まで飛行可能なのか。
(答)地上150mである。
(問)日本製のドローンを導入している自治体もあるが、中国の企業の機体を選んだ理由は。
(答)機体が大きいため安定性がある。また、スピーカーなどの機能も付いており、性能もとても良く、Google Mapと連動させることで自動操縦することも可能である。このようなことから、この機体を選定した。なお、調達時点ではこの機体がとても優れていた。
(問)情報漏えいの心配はないのか。
(答)実際に漏えいがあったことの検証を行うことは困難であり、この機体の持つ性能を優先した。
(問)普段のメンテナンスはどうしているのか。
(答)隊員が行っている。中国の販売メーカーとしては、メンテナンスというより、故障すれば買い換えるという販売スタイルであるように思う。今後、メンテナンスパックのようなものが付けばそうした契約もしていきたい。
(問)物流用のドローンとはどのようなものなのか。
(答)ドローンの下側に箱を搭載して飲料等を運ぶことができるドローンである。
(問)物流用に特別に1機調達したということか。
(答)そのとおり。今後は、川や海で溺れている要救助者に対して、レスキュー用のチューブを渡すことができるようなドローンの購入も検討したい。
(問)ドローンを購入する際の財源は。
(答)緊急防災・減災事業債を活用している。
(問)ドローンの操縦は何名で行うのか。
(答)隊長、操縦者、安全員の3名以上の体制で行う。
(問)DICS隊員は専属として勤務しているのか。
(答)消防救助隊の隊員が兼務している。
(問)今後、隊員の国家資格取得を目指すとのことであるが、資格取得者への手当などはあるのか。
(答)考えていない。
(問)火災発生の初動からドローンは飛行しているのか。
(答)現状では、初動から飛行しているわけではない。今後は、指揮隊が乗車する指揮車両にドローンを搭載しておき、当初からドローンを稼働できる状態にしていきたい。
(問)林野火災において、ドローンによる消火活動も行うのか。
(答)林野火災におけるドローンの役割は、あくまでも現状の調査であり、消火活動は、消防隊員により行っておりドローンにより消火することはしていない。消火剤を積載したドローンによる消火方法についても、今後、国による検討が行われると聞き及んでいる。
(問)現状で、消火剤を上空から散布する場合は、ヘリコプターを利用するのか。
(答)そのとおり。ヘリコプターが到着するまでにドローンで現状を把握し、ヘリコプターに情報を提供することになる。
(問)現状、4機のドローンが配備されているが、この台数で十分なのか。
(答)現時点においては問題ないと考えている。
(問)複数のドローンが一度に稼働した事例はあるのか。
(答)現時点においてはない。
(問)これからどのように活用していく予定なのか。
(答)隊員の経験のためにも積極的に活用していきたい。隊員全員が隊長の指示どおりの映像が撮れる状態にしていきたい。
(問)市のPR活動でドローンを利用する予定はあるのか。
(答)予定はない。あくまで災害現場での運用を目的としている。そもそもこの機体は、法令上、人口集中地区の上を飛行させることに制限がある。
◎7月9日 10:00~ 愛媛県松山市
<公民連携のワンストップサービスについて>
初めに、議場見学を実施した。その後、松山市議会事務局次長より歓迎のあいさつを受けた後、泊委員長よりお礼のあいさつがなされた。続いて、松山市総合政策部企画戦略課の担当者から説明を受け、質疑応答がなされた。最後に、大江副委員長よりお礼のあいさつがなされた。
<事業の概要>
(1)公民連携窓口「まつやま未来パレット」の概要
公民連携窓口「まつやま未来パレット」は、企業や大学、NPOなどの民間事業者等から地域の様々な課題を解決する提案をワンストップで受け付け、スピード感を持って事業化を検討することで、公民の連携を促し、より良いサービスを実現することを目的とするもので、「市民の生活を便利に、また、快適にするサービスや新技術を産学官で生み出す場を作る」という市長公約に基づき、令和5年5月に設置されたものである。民間の有する、技術やノウハウ、ナレッジ、専門性、企画力・販売力と、行政の有する、幅広い業務範囲、公平・公正、市民とのつながり、地域資源やフィールドという双方の強みを生かし、これまでの行政運営の発想にとらわれることなく、市民サービスの向上、地域課題の解決、財政負担の軽減などを推し進めていくことを目指しており、事業担当部局と民間事業者等とのハブ機能及び複数の事業担当部局にまたがる提案の受け皿となり、民間事業者等が市に対し、提案を行いやすい環境を構築している。
市内外を問わず、提案する事業内容を自ら実施する意思及び能力を有する「民間事業者」、「大学・研究機関」、「NPO法人等の法人」又は「任意団体」等からの提案を受け付けるが、(1)歳出を伴わないこと、(2)歳出の削減が見込まれること、(3)歳出を伴うものの、それを上回る歳入増加が見込まれること、といった市に新たな財政負担が生じないものであることという要件がある。
(2)事業実施に至った経緯
松山市は、2020年度に「SDGs未来都市」として選定されており、SDGsの推進による持続可能なまちの実現のためにも、地域課題の解決に向けた官民連携が求められている。
一方で、松山市は、現時点において人口50万人を下回っており、人口減少が始まっている。人口減少により、1 税収減による行政サービス水準の低下、2 地域公共交通の撤退・縮小、3 地域コミュニティの機能低下、4 空き家、空き店舗、工場跡地、耕作放棄、5 生活関連サービス(スーパー・映画館・カフェ等)の減少などが予測される。多様化・複雑化する地域が抱える課題に対して、財政上の制約やノウハウの限界もあり、行政だけですべての課題を解決することは困難であることから、今後の行政運営は、従来の発想にとらわれず、地域課題に行政と民間が対話と協働で、新たな価値を生み出す必要があると考え設置に至った。
(3)ワンストップ窓口設立による成果
令和5年度に設置した窓口であり、それまでは事業担当部局がそれぞれで官民連携の対応をしていたため、窓口設立による時間的コストの縮小については比較できない。
また、窓口設立後の事業者からの提案数の増減は、同様に、これまで事業担当部局がそれぞれ対応をしていたため把握していない。
これまでに民間事業者からの提案があり、事業実施に至ったものは、以下のとおり計13件である。
・市が設定したテーマに対する提案
1 交通安全の啓発活動
2 NFT、DAOを活用したデジタルプロモーション
3 プレコンセプションケアの啓発
4 スマートフォン等の契約見直しによる家計改善支援
5 松山市道(生活道路)の拡幅事業への協力
・自由な提案
6 企業版ふるさと納税寄附募集
7 複業人材を登用した官民連携プロジェクト
8 空き家対策支援サービスの活用
9 社会貢献型インターンシップの実施
10 ICTセンサーを活用したため池監視システム
11 高齢者の低栄養防止・重症化予防の推進
12 「逃げ地図」づくりを通じた災害に強い地域社会づくり
13 スマートフォンの総合相談窓口設置でのデジタルデバイド対策
(4)事業者からの反応
市に新たな財政負担が生じないものであることという条件はあるが、それでも社会貢献や、会社の信用度の向上、新たなビジネス機会の創出といった点にメリットを感じ、積極的な提案があった。また、複数の事業担当課にまたがる提案であることを理由に断られていた提案や、どの事業担当課に掛け合ったらよいかわからない提案も、まつやま未来パレット設立以降は、そこを窓口とすることができるので、事業者からは提案しやすくなったという声を聞いている。
(5)今後の課題等
令和5年度は設立した年度であり、同様の取組を行っている他の自治体においても提案を行っている事業者からの提案が多かった。一方で、市内の事業者からの提案はなかったため、今後、継続的に提案を行ってもらうためには、より積極的な周知が必要であると考えている。また、設立に際してはスモールスタートを意識して、市に新たな財政負担が生じないものであることという条件としたが、今後はこの要件を緩和するべきかの検討も必要であると考えている。
<質疑応答>
(問)サウンディング型市場調査と似ていると感じたが、違いはあるのか。
(答)明確な差異は設けていない。公民連携といってもその範囲はかなり広く、別の課がPFIを実施しているケースもある。今後は、トライアルサウンディングのようなものについても、まつやま未来パレットで実施できたらと考えている。
(問)まつやま未来パレットという窓口を設立することで、なぜ事業担当課が複数にまたがる案件の総合調整ができるようになったのか。これまではできていなかったのか。
(答)複数の事業担当課にまたがる場合は、民間事業者が相談をしても止まっていた。今は、事業担当課の職員も、まつやま未来パレットを案内することができるようになったので、総合調整がスムーズになった。
(問)提案事業者との随意契約理由がない場合などは、入札などの公募により事業者を決定することになる場合があるということであるが、民間事業者からすればせっかく提案しても公募となってしまい、提案意欲が低減すると考えられるが、この点についてどのように考えているのか。
(答)提案者が了承した場合、提案の趣旨を採用し事業者は別途公募する「趣旨採用」というものがあるが、これを広げていくことは困難であると考えている。提案者に何らかのインセンティブを与えることができないかなど、今後検討していきたい。
(問)提案をしてもらうために市職員による営業活動も行っているとのことであるが、どのようなことをしているのか。
(答) 国の地方創生SDGs官民連携プラットフォームへ掲載をしているが、民間事業者の反応は良くない。また、市内事業者との官民連携のためのプラットフォームとして設立している松山市SDGs推進協議会とも連携しているが、あまり効果が見られない。今後の課題であると認識している。
(問)提案の要件(3)「歳出を伴うものの、それを上回る歳入増加が見込まれること」を満たした上で採用された事業はあるのか。
(答)「6 企業版ふるさと納税寄附募集」である。寄附があれば民間事業者に手数料を支払う必要があるが、それ以上の寄附金が歳入として入ってくる。
(問)職員のモチベーションのためにも、官民連携が実現した場合における報奨が必要と考えるが、そういう考えはあるのか。
(答)ない。民間事業者は、まつやま未来パレットを上手く利用して事業者のPRなどができている印象がある。一方で、インセンティブがないことが、市内事業者からの提案に繋がらなかった可能性があるとも考えている。今後の参考としたい。
(問)税収減による行政サービス水準の低下など、人口減少のもたらす未来予想の説明があったが、実際にこうした問題はすでに発生しているのか。
(答)実際に起こっている。路面電車、バスといった交通手段の減便、消防団の高齢化、空き家の増加、商店街の人通りの減少など、少しずつボディーブローのように影響が出ている。
(問)「3 プレコンセプションケアの啓発」の中に、葉酸サプリの無償提供というものがあるが、どのくらいの量を提供しているのか。
(答)提供している量については、把握していない。
(問)「5 松山市道(生活道路)の拡幅事業への協力」とはどのような事業か。
(答)建築基準法によりセットバックが必要な場合、道路の拡幅を市が実施すると時間を要する。また、道路拡幅事業の予算自体が減少している。このような中で、拡幅のための工事費を民間事業者が支出してもよいから速やかに拡幅を実施したいということで提案があった。
(問)「8 空き家対策支援サービスの活用」とはどのようなものか。
(答)空き家対策に関する相談対応のためのコールセンターを民間事業者が設置している。自治体としては具体的な工事業者を紹介しにくいが、連携している民間事業者から紹介できるという利点がある。
(問)地元金融機関である愛媛銀行が、「9 社会貢献型インターンシップの実施」における共同提案者となっているが、具体的にどのような役割を担っているのか。
(答)共同提案者である株式会社クラダシのこうした取組に、愛媛銀行が賛同していたと聞いており、このことから共同で提案してきたものと推察している。愛媛銀行による出資の存否については把握していない。
(問)民間事業者にとっては、新たに市に財政負担が生じないことという要件がネックになると思われるが、民間事業者のアイデアに対して金融機関が出資等でそれを援助するなどの体制になっているのか。
(答)現状、なっていない。設立に際してはスモールスタートを意識して制度を構築している。今後、金融機関も参画する体制の構築も考えたいと思うが、実現については未定である。
(問)「10 ICTセンサーを活用したため池監視システム」が採用されているが、松山市はため池が多いのか。
(答)雨が少ないこともあり、郊外に行くとため池は多い。大雨の中、ため池の状況を人が確認しに行くリスクがなくなり、メリットがある。
(問)「10 ICTセンサーを活用したため池監視システム」はどのくらいの費用か。
(答)連携した民間事業者が設置しているもので、費用は把握していない。
(問)「13 スマートフォンの総合相談窓口設置でのデジタルデバイド対策」について、スマートフォンの交換などの相談の場合、提案者である民間事業者の営業活動に入ってしまうと考えられるが、問題ないという認識か。
(答)この事業は、デジタルデバイド対策として、どんな相談にも対応するというものである。当該事業者の営業活動の範疇に入ることも考えられるが、その点は規制していない。その営業活動に対して、それを受け入れるか否かは相談者の判断によるところであり、問題はないと考えている。
(問)実現した13の官民連携事業のうち、SDGsに沿うものはどれか。
(答)SDGsの理念に沿った持続可能なまちづくりや地域活性化に向けての取組であり、すべての事業がSDGsに沿っている。
以 上
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