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令和元年度鹿児島県鹿児島市・熊本県庁

1.視察出張委員
  委員長     篠原 光宏      委 員     里見 孝枝
  副委員長    土井 秀勝       〃    加藤 光博
  委 員     鈴木久美子         〃    上原 秀樹
   〃      大津留 求       〃    新内竜一郎
   〃      高橋 有子
2.視 察 先 鹿児島県鹿児島市・熊本県庁
3.実 施 日 令和元年7月29日(月)~30日(火)
4.調査事項 下記報告のとおり

◎7月29日 13:30~ 鹿児島県鹿児島市

<女性消防団員活躍推進事業について>
 初めに、鹿児島市議会事務局長より歓迎のあいさつを受けた後、篠原委員長よりお礼のあいさつがなされた。続いて、鹿児島市消防局 警防課消防団係 消防司令補から説明がなされた後、質疑応答がなされた。

<事業の概要>
 鹿児島市消防団は令和元年7月1日現在、組織体制として1団、5方面隊、10地区、77分団、7班の体制となっており、人員としては基本団員が定数1,571人中、実員1,501人で充足率95.5%となっている。なお、6月1日より開始した学生機能別団員は定数200人中、実員90人で充足率は45.0%である。団員の処遇(報酬)は、年額で団長86,300円、団員36,700円などとなっている。消防団員の活動として平成30年度中、団員1人あたり平均22回活動しており、主な活動は、演習・訓練や広報活動となっている。会議としては、消防団幹部会議などがあり、その会議に女性分団長も出席する。主な訓練はポンプ操法訓練や水防工法基本訓練などがある。
 女性消防団員任用開始の経緯は、平成19年に消防団員数に対する充足率は高かったものの、20人~30人程度の欠員があったため、消防団員の定数の範囲内において女性消防団員を任用することとなった。発足は平成19年12月1日、人数は24人、配置としては消防団本部付として開始した。
 昨年女性消防団員活躍推進事業を行った背景には4つの課題、1. 地域との連携強化、2.自立した組織体制の整備、3. 女性消防団員の更なる増員、4. 災害時における避難所支援活動などの新たな活躍推進、があったためである。女性消防団員の任用開始から9年が経過し、女性の視点を活かした消防団活動が順調に推進され市民から高い評価を得ており、今後は、さらに活動の幅を広げるとともに地域住民や地域分団との連携強化が求められていた。しかし、女性消防団員の組織体制と自発的な活動の展開が課題となっていたことから、女性消防分団を設置し、地域の分団と連携しやすい組織体制を構築、さらに、定数を制定するとともに、必要に応じた階級を付与した。この女性消防分団の発足により、女性消防団員による主体的な活動が推進され、災害時における避難所支援活動などの新たな活躍推進を図っている。
 女性消防分団の具体的内容は次のとおりである。
 発足日:平成30年4月1日、定数:50人(市の避難所数や他都市の状況を勘案)、
 組織:1分団3部5班体制(3消防署及び消防団の5方面隊を考慮)、階級:分団長1人・副分団長1人・部長3人・班長5人を配置(組織体制にあわせて責任者を配置したもの)。
 事業に係る予算は総額1,291万円で、内訳として報酬が187万6千円、旅費が668万円、需用費が290万6千円、備品購入費が124万8千円である。
 消防分団の現況として、令和元年7月1日現在で実員47人、年齢平均42.3歳、
就業形態は被雇用者33人、家族従事者9人、学生2人、その他3人となっており、活動回数は延べ1,332回(平成30年度中)である。

<質疑応答>
(問)50人の女性消防団員の定数があるということは本来の消防団員の定数から女性の分が除かれているのか。
(答)女性消防団員発足前の消防団員定数は、1,521人であった。それを現在は、1,571人としており、女性消防団員50人分を足した定数としている。
(問)1,521人の部分では充足していないところもあるのか。
(答)昨年の4月1日は消防団の組織再編事業を行っており、人口増加地域や過疎化地域にあわせて組織再編を行った。その結果、充足率は上がっている。
(問)欠員を埋めるため女性消防団員ができたと思うが女性分団ができたことで欠員部分はどうなったのか。また、定数が50人上乗せになったことで今まで足りていなかったところはどうなったのか。
(答)当初欠員の枠を使って本部付としていたので、地区の欠員部分に変更はない。また、欠員があった部分は組織再編で各地区の定数を変更して現在の地区の実情にあった再編をしている。なお、充足率は今年の4月現在で94.8%となっており81人欠員となっている。
(問)定数を50人とした根拠は避難所数や他都市の状況を勘案したとある。しかし、避難所数はもっと多いと思うがどうして50人となったのか。また、他都市の状況とはどのようなところを考慮したのか。
(答)避難所は約200ヵ所ある。女性消防団員50人と学生機能別団員200人の計250人で対応していこうと考えている。他都市の状況は女性消防団員の割合を中核市と県内全ての消防団で調べたところ約2.6%程度であったので、それにあわせ、2.7%程度とした。
(問)女性消防分団が発足して1年だが、団員はどのような方が多いのか。頻繁に訓練などできるのか。
(答)女性消防団員の幹部と日程の意向調査をし、同じ研修を複数回設けるようにしており、この複数回のうちで参加できる日に来てもらうようにしている。団員47人中33人が被雇用者で、仕事や、子育て、PTA活動など多忙のため基本的に複数回設けるようにしている。
(問)各地区で女性団員数のバランスはとれているのか。住んでいるエリアで差異がでるのではないか。
(答)基本的には居住している地区の消防団員等になるため差異はでるが、隣接地区同士で連携している。
(問)女性の団員はどのように選ばれたのか。地域で別の活動をしている方がなることが多いのか。
(答)地域で別の活動をしている方もいるが、家族が消防団員をやっていて興味があるという方も多い。また、女性消防団があると聞いて直接電話してくる方もいる。地域の活動を何もされていない方の入団が一番多い。
(問)子どもの防災意識の向上にも役立っていると考えるがどうか。
(答)訓練の際には、子どもたちも母親と一緒に来ており、備蓄食や車椅子などに触れるなどして防災を身近に感じることができている。
(問)危機管理の部門もあるが、消防団を所管しているのはどこか。また、自主防災組織を所管しているのはどこか。
(答)消防団は消防局の警防課である。自主防災組織は危機管理局の危機管理課である。
(問)男性の消防団員と女性の消防団員で役割分担はあるのか。また、先般の豪雨の際に役割分担はあったか。
(答)規則上はない。豪雨の際は、消防車両による広報活動などを繰り返していた。
(問)今後の女性消防団の拡大はどのように考えているか。
(答)現状、欠員が3名あるので、まずはその欠員をなくしたいと考えている。その後、拡大していける部分は拡大していく。
(問)年齢構成はバランスよくなっているか。
(答)29歳以下が9人おり、この方は新しく入団した方であった。年齢が高い方はもともといた方がそのまま長く続けていただいている状況である。なお、消防団員に定年は設けていない。
(問)出産時の対応はどうなっているか。
(答)産前8週・産後1年の消防団活動の休止を内規で定めている。
(問)今後の課題は。
(答)女性消防団員専門の分団舎と専用車両がないので整備が必要と考える。
(問)消防団幹部会議に参加されている女性分団長以外は全員男性か。
(答)男性である。

◎7月30日 10:00~ 熊本県庁

<AI事業(子育て相談支援チャットボット)について>

 初めに、篠原委員長よりあいさつがなされた後、健康福祉部 子ども・障がい福祉局子ども未来課から説明がなされた後、質疑応答がなされた。

<事業の概要>
 チャットボットを利用した「聞きなっせAIくまもと子育て」は、県が実施している「よかボス」の取り組みの一環である。
「よかボス」とは自ら仕事と生活の充実に取り組むとともに、共に働く社員や職員、従業員等の仕事と生活の充実を応援するボスのことであり、平成29年8月28日に庁議で知事・副知事が「よかボス宣言」を行った。また、「よかボス企業」グループ活動支援事業を行っている。これは、「よかボス企業」のうち3社以上でグループを作り、社員の結婚や子育てを応援する事業を自主的に取り組む場合に補助を行い、活動を支援する事業で、実施に伴う経費を対象に、1事業あたり20万円を上限に補助している。事業内容としては、社員のライフプランニング支援、ライフプランニングインターンシップ、子育てしながら再就職支援、子育て支援制度導入支援がある。
 「聞きなっせAIくまもとの子育て」は「よかボス企業」・市町村・県が連携・協力してFAQを作成している。子育て情報や子育ての一般的な質問、子育てを応援するお店の情報など、登録しているFAQは、令和元年6月現在で3,805件である。LINEの友達登録をするだけで、AIが24時間365日子育てのお尋ねに回答する仕組みになっている。現在、8月の一般公開にあわせて、位置情報から子育てを応援する店を簡単に検索できるお出かけ支援も稼働させ、子育ての孤立化を防ぎ、誰もが安心して子育てができる熊本を目指している。
 事業実施に至った経緯は男性の育休を進めたという思いからである。スマホを使って簡単に調べることができないかと考えたのがきっかけである。またAIを使ったのは、渋谷区が試験的に実施している事業を調べて使えると考えたからである。大変だったのは、各市にFAQを作成してもらうことだった。このAIは自分で回答を考えるものではなく、質問者が何を聞きたいのかを考えるAIである。したがって、用意した3,805件の回答の中から質問にあった回答を導きだす。この方が、回答が決まっているので、自分で答えを考えるAIより行政が使用するには安心である。行政にとって重要なのは正確な情報を伝えることだと考えている。自分で回答を考えるAIで、AIが洗脳されるという事件もあった。
 また、携帯であれば行政と個人が直接つながることができるのでツールとして非常に有用である。このAIは各市のホームページに誘導するので各市がホームページを作る際に、作り手の視点でなくユーザーの視点にたって作成するようになった。
 県民が知りたい情報をグーグルなどの大手検索エンジンで検索した場合、市のホームページには辿り着くがそこから知りたい情報になかなか辿りつけないということがある。このAIを使えば知りたい情報に直接アクセスすることができるということが大きなメリットである。さらに、アンケートを行う場合であっても携帯に送信するのでアンケートが手元に直接届き、その場で回答ができる。また、子育てに困っているときに使用するので、どういった場合に使われているかというのが検証できる。その蓄積されたビッグデータを活用して今後の政策に活かすこともできる。
 事業費は500万円で、初期費用に200万円、年間のランニング費用に300万円かかっている。
 アンケートでは使用者のほとんどが「使って良かった」と答えている。
 この事業はFAQを作成するまでが大変で、その後は修正をしていく程度で運用できると考える。ただし、AIが答えられなかった質問はチェックし、回答を考える作業が必要であると考えている。例えば今はアトピー関連の質問には答えられていない。したがって、AIの成長をずっと見守っていく必要がある。なお、AIの成長に重要なのは使用した後に画面に出てくる「問題は解決しましたか?」という問いに「はい」か「いいえ」で答えてもらうことである。これによりAIは自分の選んだ回答が正しかったか否かを学習することになる。この作業が非常に重要で、この最後の回答がないとAIは成長しないと考えている。現在は、「解決しました」との回答を8割程度得ている。
 今後は、県境の市町村に住んでいる方が他県の情報を知れれば、もっと使用者の役に立つツールになると考える。今後、九州全域や全国でこのAIが使えるようになれば子育てにはとてもいいことだと考えている。

 この後、実際に携帯を使用して使い方の説明を受けた。

<質疑応答>
(問)回答の対象の子どもはどの年齢か。
(答)就学未満の子どもを対象としている。第1子の子育てが一番大変との声を聞いたので、まずは就学未満に限定して取り組んでいる。
(問)子育て支援の取り組みと虐待の件数の関係で何か成果はあったか。
(答)相談先を案内する機能がある。LINEはトーク履歴が残る。本当にしんどい時にそのトーク履歴を見て何かの手助けになればと考える。今後虐待についてもログを検証していく。
(問)質問をいれたら直接、答えのあるホームページに誘導するということか。
(答)まず、質問に対する簡単な答えが表示される。その後、より詳しい内容を確認したい場合はホームページをご覧くださいということでリンクがでてくる。すでに子育て支援アプリがあるのであれば、そのQ&Aを利用すれば簡単にこのAIを活用できると思う。
(問)回答は市によって差があるのか。
(答)差がある。それぞれ参考にできる回答があるので、参考にしていただくため、一度全ての市町村の回答を一覧にして並べて、各市町村に送った。
(問)悩みなどの書き込みがあった場合は、市町村が把握できるのか。
 (答) 書き込まれたデータは、まず県に全て蓄積される。その情報を市に提供するか否かは県の判断となる。ただし、書き込みに市町村の名前が書かれていればどこの方が悩んでいるのかがわかるが、悩みが書き込まれただけでは、どこの誰が発信したのかがわからない。
(問)このシステム運用に携わっている職員の体制は。
 (答) 今ここで説明している2名で導入・運用している。県がAI企業に委託して行っているので、市町村の金銭的負担は全くない。
(問)子育てアプリとは違って、今後もいろいろ拡大できると感じたがどうか。
 (答)回答は1万件登録できる。今は約3,800件なので、まだまだ色々な質問に回答できるよう拡大が可能と考える。
導入当初はアプリの方がいいのではとの声もあった。また、なぜLINEなのかとの声もあったが、一番のポイントはセキュリティであった。セキュリティは全てLINEの責任で運用している。また、アプリであれば、OSの進化に対応するため更新に莫大な費用がかかるのが問題であった。そのようなことを協議した結果、アプリではなくLINEを使ったAIを導入することになった。
(問)常に回答は最新の状態にする必要があるがお店の場合はどうしているのか。
(答)全ての店舗にメールをした。ステッカーを張り替えるということと併せて声をかけている。情報が最新でなかった場合はユーザーから連絡があると考える。
(問)回答のビッグデータは県に蓄積されるのか。
 (答) 県に蓄積されているので、AIがどの質問に答えられていないのかはわかる。冬にインフルエンザが流行った際に、インフルエンザの質問に答えられていないということがわかったので、急遽インフルエンザの情報を入れたこともあった。
(問)自営業の方は「よかボス」になれるのか。また、従業員から「実態は『よかボス』とは異なる」といった声があったことはあるか。
 (答) なれる。従業員が1人いればよい。「よかボス」の審査は暴力団でないかどうかだけである。また、従業員からそのような声があったことはない。アンケートでは「『よかボス』宣言により、社長との距離が近くなった」や「職場が明るくなった」との評価があった。宣言をするというのは社長の思いを見える化することなので、従業員も社長が考えていたことがわかる。なお、「よかボス」とは別に労働行政で「ブライト企業」という制度があり、「よかボス」から「ブライト企業」へ進むという仕組みになっている。
(問)熊本県の出生率は。また、「よかボス」の効果は。
(答) 出生率は1.69である。効果はわからないが、3年前から県内の出生率は伸びている。
(問)結婚支援の実績はどうか。
 (答) 個人間ではなく企業間の交流を促しているので個別の実態は把握していない。
(問)県内の人口流入の状態はどうか。
(答) 県内では人口減少が続いているがその減少を緩やかにする取り組みだと考えている。
(問)「聞きなっせAIくまもと」の周知はどうするのか。
(答) 母子健康手帳を渡す際に、QRコードを一緒に配付することを考えている。また、1歳半検診と、3歳児検診、保育所や幼稚園、病院での配付を考えている。新聞やフリーペーパーでの広報も考えている。周知が一番重要である。
(問)母子手帳の配付時ということは妊娠に関することも対応できるのか。
(答)妊娠や不妊治療のことにも対応している。

 

                                                                                                        以 上

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