【透明マスク作成の背景~手話通訳とは】
テレビで連日報道される新型コロナウイルス感染症の記者会見の報道。大臣や知事などは皆マスクを着用していますが、手話通訳者はマスクを着用していません。それは、手話は、「顔の表情+口の形+手の動き」で総合的に正しいコミュニケーションを可能にするものだからです。マスクをしていては、ろう者に正しい情報が届けられないからです。
【透明マスク開発秘話】
各市町村は手話奉仕員派遣制度という障害福祉制度を実施しています。聴覚障害者の申請に基づいて手話通訳者を公費で派遣する制度で、病院、学校の懇談会、講演会、不動産売買の契約など社会生活様々な場面に派遣されます。
新型コロナウイルスが感染拡大で、病院での派遣依頼を受ける通訳者に感染の危険が迫っています。ある日、一人の通訳者が「通院の派遣に行くときに『このマスクを使用してもいいか?』」と、使い捨てマスクの真ん中にビニールを張り付け、口元をみえるように改良したマスクを市役所障害福祉課に持ってきました。
いいアイデアに感動した派遣コーディネーターの市職員(市の設置手話通訳士)は、聴力障害者協会の婦人部の会員(聴覚障害者の当事者)に写真をメールで送りました。「ろう学校で洋裁や和裁の技術を習得してきた彼女たちなら知恵を借してくれるはず」思ったのです。その日の夕方には試作品を持って市役所にやってきてくれました。
通訳者とろうの当事者が力を合わせて作成して改良を重ね、マスクを共同で作り上げました。
【ギョッと二度見されるかもしれませんが】
「手話通訳はマスクをせず命がけ」というネットニュースも見かけ、聴覚障害者への支援にも理解がすすんでいます。
透明マスクは、着用している姿は珍しさから周りの目を引きますが、「手話という言語のこと」「通訳者の感染予防のためには必要」という現状を多くの人に知っていただきたいです。