男と女の「おかしな!?」ハナシ

あなたの身の回りにも時々起こる
「これってどうなの?」「おかしくない?」という話。
このコーナーでは、毎回、「男と女のちょっとおかしな!?ハナシ」を、つぶやいてもらいます。
今日のつぶやき主は、最近、仕事を始めた40代の愛さん。
母の昌子さん、姉の友さんの3人で話しています。
愛 : 実はね。先月から家事支援のお仕事を始めたの。
友 : 下の子の圭も中学生だもんね。
塾にスマホ代に学費・・・、これからあれこれお金がかかるから、愛もしっかり稼がなきゃネ!
昌子: あ、それって、どんなお仕事なの?
愛 : 主にやるのは市の子育て支援事業のヘルパーなんだけど、産前産後のママのお家で食事を作ったり、おそうじしたり、赤ちゃんのお世話や保育園のお迎えなど諸々のお手伝いをするの。
私は家事代行会社に登録してるから、他にも高齢者や仕事が忙しい人の家に行くこともあるわ。
昌子: それって、あなたが出産で里帰りしていた時に、全部、私がやってあげていたことね(笑)。
愛 : その節はお世話になりました(笑)。
でも、今どきの“バアバ”は、仕事をしている人も多いし、いろんな家庭事情から、親に頼れるママばかりじゃないからねぇ。
友 : ジイバアや家事代行を頼る前に「夫!もっと頑張れよ!」と言いたいけどね。
愛 : あら、今どきのパパは、家事や子育てもけっこう頑張ってる人が多いのよ。
だけど男性もガッツリ育休が取れる職場はまだまだ少なくて、結局ママに家事・育児のしわ寄せが行きがちなのよね。
その部分を私がお手伝いできたらなぁ、なんて思ってる。
友 : 独身の私と違って、愛は2人の子を育てたベテラン主婦。
「お任せあれ~!」だね。
愛 : うん。「こんな私でもできるかな・・・」って思っていたけど意外にデキるの!
今まで家でやってきた家事・育児のスキルをそのまま活かせるので、ちょっと自信がついちゃった。
それとね、もうひとつ自分でもびっくりしたことがあるんだけど、初めて給与明細を見た時、「家事をしてお金がもらえた!」ってことが、ものすごく嬉しかったの。

友 : ボランティアじゃないんだから当たり前でしょ。どういうこと?
愛 : 家でどんなに一所懸命に家事をしても、誰もほめてくれないしタダ働き。
だけど家の外で家事をしたら、お金を頂けた。
つまり私の家事が「仕事」として認めてもらえたんだって気がして、もらった金額云々じゃなく単純に感動しちゃったんだ!
昌子 : だったら愛、里帰り出産の時の「支援代」、今さらだけど、払っていただこうかしら(笑)。
◆愛のつぶやき
外で家事をやって報酬をもらえたことは嬉しかったんだけど、私、結婚してから今まで20年もの間、家でず~っとタダ働きしてたってこと!?
◆昌子のつぶやき
家事・育児と仕事の両立が限界で、私は泣く泣く会社を辞めたの。
夫と同じ仕事だったんだけどね。もしもあの時、1日1時間だけでもいいから、何らかの手助けがあれば、私も仕事を続けられたんじゃないか・・・って今でも思う。
愛がそうした人の手助けをするお仕事をしているって聞いてちょっと嬉しいわ。
◆友のつぶやき
家事支援サービスの料金を調べたら、1時間当たり3000~4000円かかるみたい。
私、収入は多い方だと思うけど、それでもこの金額はちょっと簡単には出せないかなぁ。
それ以前にウチの家グチャグチャだから、たとえお仕事とはいえ、冷蔵庫の中を見られたり、洗濯物を干したりしてもらうって、かなり抵抗あるかも・・・。
【ミニ知識】
~ 「家事等の負担軽減」が成長戦略に!? ~
国は、子育てや介護による離職を減らし、新たな成長戦略の重点分野などを支える労働力を確保するための方策の1つとして、新たに家事支援サービスの国家資格を創設し、2027年秋の試験実施を予定している。
現状では、家事支援やベビーシッターサービスは、認知はされているものの、利用料の高さや他人に自宅に入られることへの抵抗感などから、利用は限定的になっている。
国家資格にすることで、家事支援サービスの質を担保し、安心して利用できるようにする。 加えて、国家資格者が提供するサービスを利用する人には、税制で優遇することも検討していくという。
参照:日本成長戦略(2027年7月)

弁護士で、不惑を越えてからの子育てに奮闘中の中村衣里さん
私もいまだに母に自宅の家事のお手伝いを頼んでいる一人です(・・・「お母さん、ありがとう!」)。
仕事をしているとどうしても手がまわらない家(家事)のことは、毎日のことだからこそ悩ましいです。
それでもまた日(太陽)はのぼり、新しい生活は続きます。
家事は本当に終わることがない「仕事」ですね。
それなのに、これまでの社会・経済上のシステムは、これを見て見ぬふりをしてきました。
「誰かが(多くの場合は女性たちが)やって当たり前、してもらって当然」の無償労働として位置づけられてきました。
家庭内で行われる掃除、洗濯、炊事、そして育児や介護などは「アンペイド・ワーク(無償労働)」と呼ばれています。
こうしたケア活動は、伝統的に「家族への愛情」や「主婦の義務」という無言の規範のもと、貨幣価値(対価)が発生しないために、社会的には「労働」として見えにくく、過小評価されてきました。
愛さんが初めての給与明細を手にした時の感動は、これまで家庭の中で「やって当たり前」とされ、誰にも評価されなかった自分のスキルや時間が、市場において価値ある「仕事」として公に認められ、可視化されたからに他なりません。
愛さんが言う「結婚してから20年間のタダ働き」という気づきは、まさにこの構造のおかしさを突いたつぶやきですね。
一方で、お母さん・昌子さんの「あの時、1日1時間でもいいから手助けがあれば、仕事を続けられたのに」というつぶやきも、大変切実で、今も昔も変わらない多くの女性の葛藤を物語っています。
「男は仕事、女は家庭」という固定的な性別役割分業のもと、ケア労働の負担が個人の、特に女性にのみに集中してきたことで、多くの人がキャリアや自己実現を諦めざるを得ませんでした。
これはまさに、個人の悩みではなく、人々の固定的な意識と社会の仕組みの欠如がもたらした、構造的な問題だと言えそうです。
なお、「固定的な意識」ということに関していえば、私が日々の法律相談等で女性の皆さんから伺う日々の生活のご様子を見ると、「女性(妻)が家事をしなければならない」「女性(妻)が家事をすることは当たり前」という伝統的な性別役割分担意識のほかに、「『完璧な』家事を(『女性(妻)が』)しなくてはならない」という、家事内容自体のいわば「高水準」を、男性だけでなく、女性のほうも意識として持ってしまっているようにも思います。
「家事」自体の「こうあるべき」にも過剰に縛られているケース(御家庭)もあるのではないでしょうか。
さて、家事支援サービスの国家資格化と試行的実施についての紹介がありました。
この背景には労働力確保という経済的な側面がありますが、これを単なる「女性を外で働かせるための手段」に留めてしまっては、これらの構造的な問題の解決にはなりません。
これまで私的な領域(家庭内)に閉じ込められてきたケアを、社会全体で支えるべき「公的なインフラ」として捉え直す、すなわち「ケアの社会化」を本質として推進していく必要があります。
それとともに、「家事や育児は家族が身を粉にしてやるべき」「家事や育児は、誰からも文句を言われないような完璧に行わないといけない」という、知らず知らずのうちに私たちを縛っているジェンダー・バイアス、固定観念を少しずつ解きほぐしていくことも必要です。
そして、このような外部からの家事支援の仕事(仕組み)が、支援を受ける側にとっては自分の時間を自分らしく生きるための支えとなると同時に、支援する側にとっても、自らのスキルで自信や経済力を得ることもできる。
そうした形で、こうした仕組みが真の意味での「双方向のエンパワーメント」になれば、結果として、この社会自体のジェンダー不平等の解消にもつながっていく起爆剤にもなり得るでしょうか。
支える側も、支えられる側も、誰もが無理をせず「自分らしく」人生の選択肢を広げられる、そんな優しく成熟した社会が求められますね。
★御紹介本★
「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?これからの経済と女性の話」
(カトリーン・マルサル著(河出書房新社))
原稿担当 : NPO法人 あなたらしくをサポート(愛称:らしーく)
イラスト : 林やよい
※このイラストを利用されたい場合は「NPO法人あなたらしくをサポート」nporasiku@gmail.com までご連絡ください。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。