男と女の「おかしな!?」ハナシ
あなたの身の回りにも時々起こる
「これってどうなの?」「おかしくない?」という話。
このコーナーでは、毎回、「男と女のちょっとおかしな!?ハナシ」を、つぶやいてもらいます。
今回のつぶやき主はケンヤさん。
大学時代の部活の友人と再会し、近況を話しています。
アキコ :それぞれ仕事を頑張っていることが聞けて、刺激になったよ。
ところで、子どもさんは、もう小学生だっけ?
ヨシアキ:上が2年生で、下が年長になったよ。
ケンヤ :ウチは、1年生。アキコのところは?
アキコ :まだ2人とも保育所に通っているから、お迎えの時間とかは、ダンナと連絡を取り合って調整してる。
ヨシアキ:オレのところも共働きなんだけどさ、ウチの職場、平均年齢が高くて、妻が専業主婦の家庭ばかりなんだよ。
ケンヤ :実は自分も今の部署に異動してきたら、共働き家庭ってオレだけで。
だから、退社後も家事・育児役割があることを分かってもらえなくてさ、かなり困ってる。
ヨシアキ:男も普通に、夕食を作ったり子どもの習い事の送迎をしてるのにな。
ケンヤ :段取りよく仕事を終えて帰ろうとしている時に、急に「今からミーティングしよう!」なんて笑顔で招集してくる。
オイオイ、とっくに定時過ぎてるって~の。
アキコ :食事担当なので帰ります、って言えばいいじゃん。
ケンヤ :女性には「お迎えは?」って、理解あり顔満々で接しているのに、オレが家庭のことを話したら、スルーされて終わった。
「食事は妻の仕事」って思い込んでいる世代なんだよな~。
アキコ :変わったヤツって思われても、勇気を持って言い続けることも大事かなぁ。
女性は、戦って徐々に権利を勝ち取ってきたからね(笑)。
◆アキコのつぶやき・・・
ウチの夫が先に帰って食事の準備をしていることを当たり前と思っていたけれど、実は彼も職場でいろいろと調整しているのかな?
聞いてみよう。
◆ヨシアキのつぶやき・・・
ウチの職場が、男性の家事・育児に無関心なことがつらかったから、今日は同じ立場のヨシアキと話ができて良かったよ。
思っていることを吐き出すって大事だな。
環境を変えてみようという勇気が少しだけ出たよ。
◆ケンヤのつぶやき・・・
前の部署は、共働きの男性がたくさんいたから普通に帰れてたけど、上司や先輩が家事を分かってくれない環境が、こんなにしんどいとは思わなかったよ。
異動したばかりで気を遣っていたけれど、アキコが言うように、自分でしっかり事情を伝えていかないとダメだな。
ミニ知識
これからの理想の上司とは?
「男性の育児参画を当たり前に」を目指した、男性職員・管理職のための育休取得促進ハンドブック「イクメンパスポート2021」を、内閣人事局が2021年3月に作成しました。
上司が、部下の男性が申請してきた育休に対して「なぜ?」と言いたくなるのは、自分が経験したことがないから。
しかしこれからの理想の上司は、部下の働き方の多様性やワークライフバランスを実現しながら成果を上げるマネジメントができることだと書かれています。
国家公務員向けですが、「イクメン診断」「イクボス診断」などもあり、読みやすい冊子です。
◆「イクメンパスポート2021」
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/male_childcare/files/ikupass_2020.pdf
弁護士で、不惑を越えてからの子育てに奮闘中の中村衣里さん
子育てを実際にしてみると、その子どもに関わる「(大人の)手」は、多ければ多いほど助かるな、と思うことがしばしばです。
そして、離婚の法律相談等を受けていると、夫婦としての仲はそれほど問題がなくても、「子どもの誕生」、まさにそのときを境に、悪化の一途を辿った(たどった)というケースが非常に多いわけですが(たとえば、夫が、子育てを妻任せにしてしまう男性であったり、妻が子育てに注力せざるを得ない状況の中、自分がかまってもらえないと「すねてしまう」男性であったり・・)、「ほぼ」ワンオペ真っ盛りの私には、そうした、特に育児を一身に担ってきた女性たちの気持ちが、ヒシヒシと痛いほどに伝わってくるのです。
しかし、私自身、自分が子育てをする前は、そこまで彼女たち(妻たち)の気持ちがわかっていたでしょうか?・・もちろん当時も、子育ての苦労について想像はできますし、共感もしていましたが、本当の意味で「身に染みて」子育てを主に担ってきた人たちの苦しさ、悲しさ、孤独は理解ができていなかったのかもしれないなとも思い返しています。
このように私自身が、自分で子育てをするようになって、ようやく、子育て中の親、母親たちの悲痛な叫び(「夫が子育てに協力してくれない」「子どもが生まれてから夫婦関係が悪くなった」等)を単なる想像ではなく、本当の意味でよく理解できるようになったことと同じように、今回の「おハナシ」のように、育児休暇を取りたいと思っている男性のみなさんにとって、職場の上司や周囲の人たちの反応が「薄く」「鈍い」と感じてしまうのは、特に周囲の方たちにそうした経験や体験がない場合には、どうしてもやむを得ないところがあるのかもしれません。
とはいえ、育児、子どもたちの成長は「待ったなし」です。
社会に出て責任をもって仕事をする女性たちも増えました。
また、例えば母親がひとりで育児の責任を抱えることによる問題や弊害も広く知られるようになっています。
ある意味当然のこととも言えますが、女性、男性問わず、子をもった親の責任として、実際に子どもたちに「関わる」形で、一緒に子育てを担っていくことは、子どもたちにとってはもちろんのこと、親自身にとっても大切なことなのです。
そのためにも、このいわゆる男性育児の「過渡期」(男性育児が「当たり前」になるまでの時期)を、ぜひとも、現代の「お父さん」たちには様々な工夫をして乗り越えていただき、将来的には、未来の「パパ」たちを支える立場になっていただきたいと心から願うところです。
さて、子育ては、一人の何もできない人間(赤ちゃん)が、座って、立って、歩き出し、言葉を話し始める・・人類の長い進化の過程を垣間見るようなロマンもあり、こんな工夫をしてみたら子どもはどんな反応をするだろうというクリエイティブな事業でもあります。
また、忍耐力(辛抱強さ)や人への許しを学ぶことができる機会でもあります。
そうした意味では、子育てに関わらないのは全く「損をしている!」と、多くの男性たちには声を出して言いたいです。
また、男性たちが子育てに実際に関わることの意味は、これまで申し上げてきたように、男性の育児経験者を増やして社会全体を子育てにフレンドリーな社会に!ということや、子育ての楽しさ・奥深さを知ることができるように!というだけではありません。
多くの男性たちは、実は自分たちが、社会的には多数派、強者のカテゴリーに入っており優遇された存在であるということを自覚していないわけですが(この点、女性たちは、社会のジェンダー構造の中で、多かれ少なかれ、女性であるということだけで、誰もが少数派に位置付けられた経験を持っているといえます)、こうした「子育て」の経験を通じて、いやおうなしに少数派の立場に置かれ、弱い立場を味わうことができる、ある意味で「貴重」な経験にもなることと思います。
そして男性たちにとってこのような「少数派」に置かれるという体験は、決してマイナスになるものではありません。
社会の中にあって、声をあげてもなかなか受け入れてもらえない弱い立場の人たちの存在を知り、共感できるという武器(強み)を手に入れることになると思うのです。
「多様性」は、間違いなく現代社会のキーワードであり、少数派も含めた、「多様性」を意識することなく今後の経済成長・社会成長はないと言えるでしょう。
自分自身がマイノリティの立場に置かれた経験・体験がある人の強み、他者の痛みを知った人の優しさは、家庭の中ではもちろんのこと、次に仕事等の経済活動や社会活動へ戻った際にも、きっと活かされるものと思います。
原稿担当 : NPO法人 あなたらしくをサポート(愛称:らしーく)
イラスト : 林やよい
※このイラストを利用されたい場合は「NPO法人あなたらしくをサポート」nporasiku@gmail.com までご連絡ください。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。